広報パーソンのつぶやき

事業会社の広報担当者と広報コンサルティングの経験からコミュニケーション全般をメインに、ライフスタイル風なネタも。全国通訳案内士(英語)

東京の生活に慣れたという一番わかりやすい目安

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■謝罪のスピード

 米国出身で現在、東京都内の私大で教鞭をとっている著者が書いた「トーキョーの謎は今日も深まる」(2009年)に「謝罪のスピード」というコラムがありました。電車から降りるときに、うっかり隣の男性のつま先を踏んでしまって、とっさに足を上げて「すみません!」と。

トーキョーの謎は今日も深まる<僕、トーキョーの味方です>

 

 著者によれば、「自己最速の謝罪の一つだったに違いない」、「まったく、日本人になりつつありな」とその際の感想を述べています。東京生活が長くなるにつれて、謝罪のスピードが速くなってきたものだと実感した、といいます。

 

 同じようなことをしてしまったら、自身もあたりまえのように同じような行動をとるはずです。多くの人もとっさに「失礼」とか「ごめんなさい」とお詫びの一言を発するのでは。著者によれば、「東京の生活に慣れたという一番わかりやすい目安は、謝罪のスピード」だと。これを踏まえて「すでに立派な『ネイティブ謝罪人』だ」と自負しています。

 

 謝罪のスピードが東京(日本)への慣れを示す尺度になるという考えは興味深いです。「(降りようとしている人がいるのに)隣の男性が足を出していたのが悪い」と考える人もいるでしょうし、そうした考えに立つ人は日本人より外国人に多いという印象があるので。

 

■記者会見にも必要な「謝罪のスピード」

 危機管理や広報の仕事をしていると、企業や団体の「謝罪」会見の訓練に立ち会うことがよくありますが、上記のエピソードを読むと改めて日本は「謝罪の文化」が根付いていることを感じます。

 

 こうした会見におけるお粗末な言動や立ち振る舞いが、その会社の後の存亡を危うくすることが少なくありません。そのために模擬記者会見のようなことが行われるわけですが。言動や立ち振る舞いは訓練を定期的に繰り返すことで改善されますが、逆に記者会見の謝罪のスピードはそうもいきません。

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 記者会見における謝罪のスピードといえば、不祥事や事故が発覚してから会見の実施までのスピードが最も重要です。健康被害がでているのに、判断の遅れとスピード感の欠如によって、被害が拡大したり。「自分たちは悪くない」という立場に固執してしまって、のらりくらりと対応することで事態が炎上したり。

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 「誤ればすむ」とは必ずしも言えませんが、冒頭のエピソードや日本人の特徴を考えると、「誤ることで事態の改善の第一歩とする」と捉えたほうがうまくいく場合が多いと感じます。

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「常日頃から意識的に『広報資源』を蓄えておく」

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「常日頃から意識的に『広報資源』を蓄えておく」

 広報担当者に長く読み継がれている小説に「広報室沈黙す」があります。この作品の著者である高杉良氏のインタビューを最近読みました。「企業広報完全マニュアル」(2014年)というムック本の巻頭にその記事があります。

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 この中で、参考になる記述がいくつかありました。例えば、「広報に何が求められているのでしょうか」との問いに、「常日頃から意識的に『広報資源』を蓄えておく」ことだと。さらに、「広報は細部まではともかく、自分の会社の全体像を常につかんでおかなければならない」と述べています。

 

 確かにその通りです。厳しくいえば、自社の全体像を理解していないようでは広報パーソンとしては失格です。とはいえ、そうなりたくても、なりたてのころはそうもいきません。そこで高杉氏は「『社内報』の持つ意味が重要だ」といいます。

 

 「充実した内容の社内報をつくるには、各部署に社内人脈を張り巡らせておく必要もある。それが取材対応に役立つはず」と。さらにいえば、業界他社や世の中の動きにもアンテナを張っておくことも大事。なので社内からマスコミや他社に人脈を少しずつ広げていくのがいいでしょう。

 

 大きな会社になると、社内報制作を外注したり、ハウスエージェンシーに任せたりすることも多いと思います。実際、筆者のいた会社でもそうでした。従って社内報制作に関わることはありませんでしたが、内容はつぶさに読むようにしていました。直接、取材のヒントにつながることはありませんでしたが、全国(あるいは海外)の拠点で働く社員の仕事ぶりを知るいい機会でした。

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 社内報は当然社員向けですが、以前いた会社では記者にも配布するようにしていました。ただでさえ多くのリリースに埋もれて取材を行っているのですから、読んでもらうことはなかなかかなわないかもしれませんが。

 

 最近ではペーパーレスにする会社もあると聞きますが、社内報は「(家に持ち帰って)社員の家族にも読んでもらうべきもの」と考えれば、やはり紙のままの方がベターです。

 

■リスク発生時の広報対応

 批判的な取材に対しての対応について、高杉氏は「高い説明能力が求められる」としたうえで、次のように述べています。「『そのことについては、そういう面もある。しかし、こういう事実もある』と。この”しかし”というのが大事。(中略)例えば、8割悪くても、2割は悪くない面、良い面がある。そこを説得できるか」。

 

 記者と無用な対立は、「説明能力の低さ」によって引き起こされることが少なくありません。繰り返される謝罪会見での失態は、こうした基本動作に対する備えが不十分なことで起こります。

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国立公園に訪れた外国人の数

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■外国人に人気の高いのは富士箱根伊豆国立公園

 2月8日の朝日新聞に「国立公園訪れた外国人 500万人超」という記事がありました。訪日外国人は増加の一途を辿り、2016年は前の年に比べて2割以上増えて、2403万人でしたが、5人に1人は国立公園に訪れている計算になります。国立公園を管轄する環境庁は、2020年に1000万人の外国人来訪者を目指しているそうです。

 

 最も人気が高いのは、富士箱根伊豆国立公園で257万人と全体の半分を占めます。2番目は支笏洞爺(北海道)で82万人、3番目は阿蘇くじゅう(熊本県大分県)で67万人でした。中部山岳(長野県、岐阜県富山県新潟県)が35万人、瀬戸内海が31万人と続きます。国立公園は全国に33か所ありますが、訪問地が全国的にうまくバランスしている印象です。

 

 東京からも近く、富士山を頂き、温泉地も豊富な富士箱根伊豆が人気になるのはうなずけるところです。ちなみに東京には他にも二つの国立公園があります。小笠原と秩父多摩甲斐ですが、こちらは10位までには入っていませんでした。

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■「ゴールデンルート」と「広域観光周遊ルート」

 日本に来る外国人が増えることは、経済でもプラス効果が大きく、相互理解を深めるいい機会になると思います。一方で「ゴールデンルート」と呼ばれる定番の主要観光地に集中しがちという問題もあるとも聞きます。

 

 東京や大阪といった大都市を起点や終点にそこから富士山や京都に足を伸ばす観光地巡りのことをゴールデンルートといいます。旅行の効率化を考えれば、訪日経験の浅い外国人ならそうしたコースを選ぶのも無理からぬことです。

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 観光庁では、こうした定番コースに属しない「広域観光周遊ルート」というものを2015年に7ルート、2016年にも4ルートを認定しています。同庁の資料によれば、「外国人旅行者の地方への誘客を図るため、複数の広域観光周遊ルートを認定し、 関係省庁の施策を集中投入するとともに、地域が推進する取組をパッケージで支援し、 海外に強力に発信」すると。

 

 去年認定された新ルートの一つに「広域関東周遊ルート『東京圏大回廊』」というものがあります。なんとも「前のめり」なネーミングですが、羽田や成田に加え、茨城、新潟、福島の地方空港等を 起点・終点として、点在する観光地を巡るというものです。

 

 他三件は、「日本のてっぺん。きた北海道ルート。」、「縁の道~山陰~」、「Be. Okinawa 琉球列島周遊ルート」です。これらはどれも訪日外国人の誘致を意識したものですが、われわれ日本人もこうしたルートを参考にしながら、旅を楽しむのも一興ではないかと思います。

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