広報パーソンのつぶやき

事業会社の広報担当者と広報コンサルティングの経験からコミュニケーション全般をメインに、ライフスタイル風なネタも。全国通訳案内士(英語)

久しぶりの北海道訪問で感じたこと

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北海道大学の構内の紅葉(2018年11月)


■128年ぶりの記録

 先日、札幌と小樽に行ってきました。今年の札幌の初雪は11月20日の午前1時前。ちょうどこの日の夕方に北海道から東京に戻ってきましたが、そのころにはすっかり溶けていました。報道によれば、平年より23日、昨年より28日それぞれ遅く、128年前の統計開始以来の1890年の記録と並ぶ最も遅い初雪だといいます。

 

 筆者は札幌に生まれ、小樽でも学生時代を過ごしたのでよくわかりますが、この時期なら、1メートルくらい雪が積もっていても何の不思議もありません。

 前回の札幌、小樽の訪問は1月下旬でした。「いかにも」な寒さと雪の量でしたが、その時に比べると「本当に同じ場所なのか?」と思えるような暖かさでした。平成の始まりと共に北海道を後にして以来、折に触れて戻る機会を作っていますが、どの季節にきても真っ先に思い出すのは凍るような寒さと深々と降る雪です。

■道央で起こった大きな地震
今年の9月6日の午前3時過ぎに北海道胆振地方を震源とする地震がありました。「内地(北海道の人は本州以南をひとまとめにこのように言います)」の人には、なじみがない地名だと思います。

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北海道庁

 胆振はいぶりと読み、苫小牧市室蘭市登別市洞爺湖町などがこの地方に含まれます。胆振東部の厚真町では震度7を記録しました。ちなみに札幌市は石狩地方、小樽市は後志(しりべし)地方に含まれます。

 札幌市でも北区が震度5強、中央区小樽市は震度4を観測しました。小樽在住の今でも現役の70代のスナックのマスターによると、「小樽は地震が少ないから、とてもびっくりした。しかも停電したし。その日の夕方にようやく市内の電気が復旧した」と。真夜中の震度4で停電が半日続いたとなれば、不安になるのも当然でしょう。

 被災された方にはあらためてお見舞いを申し上げます。道産子の一人として、一日も早い復興を願ってやみません。

■人口12万人を切った小樽市
 そのマスターに初雪の遅れの話を振っても、「どうせそのうち寒くなって雪も『がっぽり』降るんだから」と意に介していないようでした。それよりも、気にしていたのは小樽の人口のようで、「小樽市の人口がとうとう昨年12万人を切っちゃった」と。

 小樽市の平成元年の人口は166,579人に対し、平成29年5月に12万人を下回って、119,985人になってしまいました約30年で28%の減少という計算です。一方の札幌市は平成元年が約160万人に対し、平成29年5月が195万人となり、22%の増加なので、小樽市の人口減少の要因の一つは、札幌市への転出が要因の一つとみて間違いないでしょう。札幌から小樽の学校に通う学生のことを「札通生」といいますが、その札通生も増えたはずです。

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 小樽市の人口減少は昭和39年から続いており、53年連続前年割れだそうです。半世紀に渡り人口が減り続けている都市というのも珍しいのではないでしょうか。残念な流れですが、少子高齢化も進む中で、減少を食い止める有効策を打ち出すのはかなり難しそうです。

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「遅くとも10分以下。早ければ早いほどいい」というルール

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■迷うことなく一報を
 「30分ルール」をという組織の連絡ルールがあることを「自治不祥事における危機管理広報」という本で初めて知りました。これを実践しているのは東京都足立区です。この本によると、区長の携帯電話には、課長級以上の管理職全ての携帯電話番号、メールアドレス、自宅の電話番号が登録されているのだと。

自治体不祥事における危機管理広報―管理職の心得と記者会見までの対応―

自治体不祥事における危機管理広報―管理職の心得と記者会見までの対応―

 

 
 そしてひとたび緊急事態が起こると、「30分以内」に区長に第一報をするというルールを徹底しているそうです。「今起こっていることは緊急事態なのか?」、「夜遅くに連絡するのは相手にとって迷惑なのではないか?」といった判断に迷う場面も多いと考えられますが、「情報のトリアージ選別とか優先順位を意味するフランス語)などと言っていると余計にハードルが上がる」から、迷うことなく、一報しなさい、ということのようです。

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■緊急事態で大事なこと
 緊急事態が発生した際に最も重要なこととして、「初動の重要性」が挙げられます。そして初動において重要なのは、関係者間で情報を共有するということです。平時から緊急連絡網や通報フローを整備しておくことは、有事のための備えの一つといえます。しかし、整備をしていても、徹底されていなければ意味がありません。その意味で、組織のリーダーが「30分ルール」を決めて、定期的な訓練をしておけば、いざという時に適切な対応を取ることができるでしょう。

 工場火災が発生したことがある某社の広報担当者の話を以前聞いたことがありますが、「火災発生から消防署への連絡に10分以上かけるのは問題だ」といいます。この会社の場合、発見者や自衛消防隊による初期消火を試みたため、連絡まで10数分かかってしまいました。

 この会社に限らず、「この程度の火災なら消火できる」といった判断ミスや社内ルールとして発見者による消防署への通報を認めず、自前で消火活動を行うことが前提の会社もあります。

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■ボヤでもいいから連絡を
 この広報担当者が消防署員から、「ボヤでも良いからすぐ連絡してくれ」と咎められたそうです。つまり、「(結果として、)消火活動をせずに消防車が帰っても問題ない」と言い換えることができます。この会社では、この火災を教訓に火災発信機と連動した消防署とのホットラインを設置しました。

 火災発生時の消防署への第一報は「遅くとも10分以下。早ければ早いほどいい」というルールが適用できそうです。

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 久々の投稿となりましたが、時間を見つけてこれからもブログを続けたいと思います。

広報活動の成果を広告に換算することの意味

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■広報活動の成果を広告に換算することの意味

 昔の話になりますが、クライアントの求めに応じて、広告換算費用をレポートしていたことがあります。広報活動の成果を測る指標として利用するためです。記事を定規で測って面積を計算し、誰かが作った代々受け継がれているエクセルシートにその値を入力します。

 

 面積を入れると瞬時に広告換算費用が割り出されるという、なかなかの優れものでした。ちなみにテレビで放映された時も放映された秒数を入力すれば、同様の換算ができるようになっていました。

 記事数が多いと気の遠くなるようなローテクかつ単純作業です。「広報活動による成果を広告換算することにどれほどの意味があるのか?」と自問自答しながらの作業でしたが、それを行うことで対価を得ていたわけですから、文句は言えません。

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 日本語だと広報と広告とでは字面が似ていますが、英語では前者をPublic Relations後者をAdvertisementといいます。マスコミの理解や納得を得ながら掲載や放映を「無償で」獲得することを旨としているのが広報なのに対して、そこを「有償で」行うのが広告です。

 広告は膨大な予算を投下すれば商品の売り上げにつながるのが一般的です。つまり、(予算を投下すればするほど)効果が上がりやすい。一方、広報活動の効果測定は広報部門の永遠の課題ともいうべき難問です。露出すればするほどいいわけでもありません。不祥事ではネガティブな記事ばかり出てしまう訳ですから。経済広報センターが3年ごとに行っている「企業の広報活動に関する意識実態調査」でも常に最上位に上がっています。

 そもそも違う広報と広告を無理やり広告費に換算してしまうので、筆者のように「意味を見いだせない」と感じる人は少なからずいるのではないでしょうか。とはいえ、他に広報活動の効果や成果を定量的に測る方法がなければ、それを継続せざるを得ないと感じる企業があっても不思議ではありませんけど。

 

 一つ言えるのは、広報と広告の「違いがピンとこない人」には、それなりの説得力が広告換算にはあるかもしれませんが、「違いがわかればわかるほど」広告換算をすることにピンとこなくなるのではないかと。

■広告換算よりも重視していたこと
 筆者が広報担当者だった会社では広告換算、記事件数、発表件数、あるいは取材件数といった定量データの管理に重きを置いていませんでした。こうした数字を年度目標にすることもありませんでした。ベテランの広報パーソンである上司の方針でしたが、筆者が同じ立場でも同じようにしたと思います。

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 そのかわりにマスコミとの懇親を兼ねた情報交換は頻繁に行っていました。「自社をよく思ってもらいたい」、「取材機会を創出して、ポジティブな記事を書いてもらいたい」といった下心は当然ありましたが、自社の広報対応の印象を忌憚なく話してもらうようにしていました。また、業界を問わず広報活動に熱心に取り組んでいる会社の事例などを聞いて自社の活動に活かせるものはないかも探るようにしていました

 広告換算レポートを毎月行っていた某社の場合、複数のベテラン広報担当者が2,3年ほどで相次いで異動となり、経験年数が浅い担当者ばかりになった頃に広告換算が採用されました。その後、作業を内製化するということで契約はストップしてしまいましたが。

 

 その会社がいまだに広告換算を行っているのかは不明ですが、そのまま今でも広報担当者としているのなら、広告換算の限界のようなものを感じているのかもしれません。

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