絶対抜かれてはならない戦い
企業を担当する記者(全国紙であれば経済部、日経であれば企業報道部)にとって、取材意欲を駆り立てるテーマとして「M&A」そして「社長人事」があります。これらを他紙に先駆けてスクープすることが記者の大きな勲章となり、「日経の〇〇記者は・・・を抜いた記者だ」とその名を刻まれることになります。
裏を返せば、広報担当者にとって「絶対抜かれてはならない」テーマであり、サッカーの日本代表ではありませんが、「絶対負けられない戦い」と言っても過言ではありません。3月期決算の企業の社長人事は2月から5月までの間に発表されることが多く、記者にとっても広報にとっても、気の抜けない季節となります。
最も大事なことは情報漏洩をいかに防ぐかにつきます。つまり徹底した情報管理が必要です。以下のようなポイントを押さえておくべきでしょう。
- 情報はごく限られた人物以外には漏らさない。
- リリース等の作成、写真や会場の手配も責任ある立場の方が秘密裡に行う。
- 社長、新社長、他役員のインタビュー設営を控える。
- 夜討ち朝駆けも予想されるが、出来るだけ面会を避けていただく。
- トップ(あるいは広報担当役員)との情報交換をいつも以上に密にする。
このほか、「発表直前は携帯の通じないところへ退避しておく(=普段のように容易にマスコミとコンタクトしない)」、「リリース等の作成は部員が帰社後に行う(一度退社した後に再び会社に戻ってくる)」、「部員には当日にその事実を伝える」、「発表日が近づいたら新旧社長は家には帰らずホテルに宿泊する」等が行われることもあります。
「歴代の社長人事を抜かれたことがない」と豪語していたある会社の広報部長を知っていますが、その後、その会社の社長人事が日経の1面に特報として掲載されました。それだけお互いの激しいせめぎ合いがある取材テーマです、