広報パーソンのつぶやき

事業会社の広報担当者と広報コンサルティングの経験からコミュニケーション全般をメインに、ライフスタイル風なネタも。全国通訳案内士(英語)

非難される側と追及する側の溝は埋まらないのか

 

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 ちょっと古い話ですが、2013年12月20日の朝日新聞天声人語」に、その前の日に行われた猪瀬直樹東京都知事の辞任会見を取り上げています。

 

 「1幕目では、問題は認めるが小さく見せようとする。2幕目で火消しの言い逃れを連発。そのために3幕で傷口をいっそう広げ、終幕で進退きわまり、降参。」とリスク発生からの動きを起承転結風にわかりやすく説明していました。

 

 多くの企業の不祥事もそうですが、こうした起承転結をたどるケースが後を絶ちません。この年に発覚したホテルチェーンの食品偽装問題も同様でした。

 

 このケースでは、1幕目では、部長クラスが状況説明をし、「小さく見せようとする」意思が感じられます。なので、記者が反発するのもうなずけます。2幕目でようやく社長が会見を行い、「従業員の知識不足などが原因による誤表示だ」と説明、再発防止策と社内処分を発表しましたが、言い逃れと映り、記者の不信感を募らせる結果となりました。

 
 そして3幕目では高級レストランでの食事を楽しみにしていた利用者を欺く「食材偽装」だとして、マスコミによる非難の声が高まり、社長の辞任という形で終幕を迎えました。

 

 猪瀬前知事の問題もそうですが、結局、非難される側と追及する側の認識の溝は最後まで埋まることがないまま、当事者の望まない結果にどんどん進んでいきました。

 

 物の見方や考え方は立場によって異なるものですが、マスコミは権力や企業のチェック機能を有しており、その認識は社会の思いを代弁するものでもあります。

 

 与える影響を鑑みて、「マスコミ側の認識に安易に乗るのは得策ではない」と考えるのも、無理からぬところです。しかし、反省の姿勢が見えないと映ってしまった結果、窮地の度合いを深めることになることをこれらの事例が示しています。