印象に残っている40年前の比較広告
最近は鳴りを潜めていますが、比較広告といえばペプシコーラを思い出す人が多いと思います。昨年「ペプシネックスゼロ(青組)」と「コカ・コーラゼロ(赤組)」のどちらがおいしいかを500名に飲み比べてもらった結果、約6割の人がペプシを選んだことを発表し、青組が歓喜するという内容を放映していました。
別のバージョンもあります。今でもエピソード3が流れていますが、俳優の小栗旬が(かなりかっこいい)桃太郎に扮した「鬼退治編」です。社名こそ出していませんが、このCMもコカ・コーラに対する強い対抗意識が伺えます。「飲み比べ編」のように露骨ではありませんが、「自分より強いヤツを倒せ」のコピーなどから「赤い鬼=コカ・コーラ」を意識して制作されていることがわかります。
ペプシではこれまでも、街頭を行き交う若者に目隠しして両方を飲ませて、「ペプシのほうがおいしい」という反応を集めて、CMにした「ペプシチャレンジ」もありました。
ペプシのこれらのCMは「やんちゃな次男坊」という商品の立ち位置をうまく利用して「これぐらいの“やんちゃ”は許されるだろう」というイメージをうまく逆手に取っています。「優等生の長男坊」コカ・コーラが「金持ちケンカせず」と静観することも計算済みなのでしょう。
比較広告そのものは昔から行われている手法ですが、特に印象に残っているものとして今ではほとんど見る機会のなくなった「写真フィルム」のCMがあります。
サクラカラーとライバルと思しき商品の箱をそれぞれ手に持った、当時人気絶頂のコメディアンの萩本欽一が「どっちが得か、よーく考えてみよう」というせりふの後に、ライバルの白い箱をポロっと落としてしまうというものです。
写真フィルムはそれまで20枚撮りでしたが、このCMをきっかけにサクラカラーは4枚増やして24枚撮りのフィルムを初めて投入しました。40年ほど前の幼少時に流れていたものですが、鮮烈な印象に残るCMの一つです。
ライバルは事実上一社しかないので、誰もが富士フィルムの製品であることがわかります。撮影可能な枚数が増えても値段が変わらないため、当然利用者のお得感にもつながり、ほどなくして富士フィルムも追随することとなりました。
CMだけでなく、商品そのものも業界を揺るがす大きなインパクトを残しました。ちなみにデジカメ全盛時代の今でも、富士フィルムは24枚撮りのフィルムを細々と生産を続けているようですが、サクラカラーは既に撤退しています。時代の移り変わりを感じます。