広報パーソンのつぶやき

事業会社の広報担当者と広報コンサルティングの経験からコミュニケーション全般をメインに、ライフスタイル風なネタも。

ジョンソン&ジョンソンと参天製薬の意外な共通点(前編)

 

 ジョンソン&ジョンソンと参天製薬。この2社は医薬関連企業ですが、意外な共通点があります。それは、両社とも危機管理広報がうまく機能した結果、危機が発生してなお、その信頼を高めたという点です。記憶に新しい日揮の広報対応もその一つですが、両社の対応はそれ以前から語り草になっている事例です。

yhkhashimoto.hatenablog.com

 

■ジョンソン&ジョンソンの例

【第2類医薬品】タイレノールA 20錠

 1982年にジョンソン&ジョンソン(J&J)が販売する主力頭痛薬「タイレノール」を服用した7名が相次いで死亡する事件が発生しました。原因は何者かが意図的にシアン化合物を混入した殺人事件の疑いがあることがわかりました。

 

 J&J経営陣の決断は素早く、「タイレノールにシアン化合物混入の疑いがある」と判明した時点で速やかに記者会見を行い、「タイレノールの服用をやめること」と「対象製品すべての回収と製造中止」を発表しました。同製品の製造は子会社が行っていましたが、販売を行うJ&Jが陣頭指揮に立ちました。

 

 その後もテレビニュースへの出演や記者会見を繰り返し行い、「消費者の命を守ることが最優先」というメッセージを継続的に発信しました。回収費用には1億ドルの費用を投じたといわれています。

 

さらに、消費者からの質問に答えるためのホットラインの設置、完全包装した製品との無料交換、事情説明のために全社員およびOBへの手紙の送付、などあらゆる手段を講じました。

 

 また、同社では包装を三重にした改良製品を2週間で開発して全製品に適用、その後もカプセルからタブレットに変更するなどの改善策を行いました。

 

 こうした対応を矢継ぎ早に行った結果、「消費者をリスクにさらすことより、自社が膨大な損失を被ることを選択した」として好意的論調が支配的となりました。

 

 同社にはこの時、「危機管理マニュアル」が整備されておらず、唯一の行動規範は「我が信条」でした。この中には、「顧客と消費者に対する責任」を第一に挙げており、これがよりどころとなりました。

 

 経営トップの強力なリーダーシップのもとで、積極的に情報開示を行うという姿勢と「何より消費者の命を守ることを第一に考えている」とのメッセージを一貫してとり続けた結果、破綻寸前といわれた同社は見事復活しました。

 

 今でも「尊敬すべき会社ランキング」の上位に常にランキングされています。

 

 後編に続きます。