海外メディアと積極的な関係づくりを
広報に限りませんが、ある専門領域の仕事を長く続けていると「引き出し」が増えてくるものです。日頃から視野を広く持つことが大事だと感じていますが、海外メディアとこれまで培ってきたリレーションから「海外広報」について書いてみます。
現在、多くの海外メディアが日本を拠点に取材活動を行っています。フォーリンプレスセンターでは、ニュースリリースの配信サービスを行っていますが、メールによる配信先として登録されている機関は英文リリースが148機関、和文は96機関となっています。(重複あり。2014年5月現在)
全ての海外メディアが自前の特派員を派遣しているわけではなく、フリーランスのジャーナリスト(ストリンガーという)と契約して、記事の出来高に応じて報酬を払うところもあります。
ドイツのとあるメディアの東京支局では、韓国や東南アジアまでカバーしていると聞いたことがあります。一方、中国国営の通信社である新華社では恵比寿の中国大使館別館に支局(兼宿舎)を構え、10人ほどの特派員が常駐しています。ただ、これほどの陣容かなりまれです。多くの海外メディアは自宅が支局を兼ね、1人で取材活動を行っています。
多くの広報担当者は国内のメディアとはフェース・トゥ・フェースの関係を築くことに腐心するはずです。しかし、海外メディアとの関係を築くことには、二の足を踏むことが多いようです。その理由の一つに言葉の問題があります。
国内のメディアでもトラブルになることがあるわけですから、無理はありません。しかし、リリースを配るだけのお付き合いでは記事になるはずもありません。何とか自分たちの会社を理解してもらい、記事につなげようと日本外国特派員協会などに足しげく通っている広報担当者もいます。
先に述べたように和文リリースの配信先として96機関が登録されていることからもわかるように、こちらが思っているほどの壁はありません。特に中国や韓国などアジア系の特派員の大半は日本語が堪能です。もちろん、欧米メディアは英語しか話せない特派員もいるので、英語ができるとアドバンテージになります。
シンガポールのとある英字紙の東京支局長は来日して20年ほどの親日派で日本語も堪能です。彼によると「シンガポールに進出している企業、あるいは進出しようとしている企業が主な取材先。それ以外の企業を取材することも少なくないが、取材を申し込んでもなかなか応じてくれない」と漏らしていました。
折しも、2015年の訪日外国人客数が先月10日時点で昨年の実績(約1341万人)を超えたと発表しました。通年では1900万人に届くとも言われています。もちろん過去最高です。海外メディアとの関係を見直すいいきっかけになればと思います。