広報パーソンのつぶやき

事業会社の広報担当者と広報コンサルティングの経験からコミュニケーション全般をメインに、ライフスタイル風なネタも。全国通訳案内士(英語)

新聞論調の二極化は危機感の表れ

 

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 安保関連法の成立や抗議デモでは、全国紙の論調や扱いがはっきり分かれました。毎日新聞のある方は先日、「以前はそこまで顕著ではなかったが、二極化している」と述べていました。安倍政権が掲げる政策と自社の考えが「近いのか遠いのか」もありますが、特徴のある紙面にしなければ生き残れないという危機感の表れでもあります。

 

 新聞社の信頼を大きく損なうような事件や昨年4月の消費税増税などで経営環境は厳しさを増しています。再来年には10%への再増税が控える一方、新聞業界が求めている軽減税率の適用も不透明です。朝日新聞を購読している筆者としては、適用は有難いと感じる反面、情報入手の手段の多様化などもあって「生活必需品と言えるのか?」という疑問も残ります。

なぜ新聞に軽減税率が必要なのですか?|聞いてください!新聞への消費税軽減税率適用のこと|日本新聞協会

 

  8月14日に発表されたいわゆる「安倍談話」について、毎日新聞は「『侵略』が日本の行為か、特定を避けた。『反省』、『お詫び』について、歴代内閣の取組を引用しての『半身の言葉』ではメッセージ力乏しい。誰に向けて何を目指して出されたのか不明確」と批判的スタンスを取りました。

 

 朝日新聞は「『侵略』、『植民地支配』の主語はぼかされた。戦後70年の歴史総括として極めて不十分。見出しも『何のために出したのか』」と出す必要のない談話であったと手厳しいものでしたし、東京新聞も「日本による植民地支配に対する反省とお詫びを表明したとは受け取りがたい」と批判しました。

 

 これに対し、読売新聞は「先の大戦への反省を踏まえつつ、新たな日本の針路を明確に示した。『侵略』を明記したことで、国際社会の信頼を高め、『歴史修正主義』といった一部の疑念を晴らした」と評価しました。

 

 産経新聞も「『謝罪を続ける宿命を先の世代に背負わせてはならない』との表現について『重要なのは、この談話を機会に謝罪外交を断ち切ることだ』」と言い切っています。

 

 8月30日に国会議事堂周辺などで開かれた安保法案に反対する大規模デモの扱いも分かれました。朝日は1面の左肩に横見出しの他、3面の「時時刻刻」、社会面のほぼ全面を使って大きく報じた一方、読売は対社面のみで扱いも小さなものでした。

 

 9月18日に成立した安保関連法の成立への賛否も同様でした。毎日は「国民の支持のない自衛隊の海外派兵はあってはならない」と異を唱える一方、産経は「自国存立のために集団的自衛権を行使するのは当然だ」と主張しています。

 

 このような各紙の論調や扱いの違いについて、「スマホにニュースが並ぶ時代に新聞も様変わりを求められ、論調の違いが最大の個性になった。メディア環境の変化が二極化に拍車をかけた」とする識者のコメントが寄せられていました。

www.asahi.com

 

 アメリカを代表する新聞、ニューヨークタイムズには「Op-Ed(Oppsosite the editorial page)」というコラムがあり、社論とは別の立場の見解を意識的に載せています。

 

 社説や記事の扱いで独自色を出すのはある意味当然のことです。ただ、どちらの立場にしても、極端に走るのではなく、異なる立場の見解も載せることで、読者の判断を仰ぐようにしたらいいと感じます。ちょうど今は新聞週間(毎年10月15日からの1週間)。今後も新聞には期待しています。

ryukyushimpo.jp