提供側にも導入側にもメリットの大きい広報素材としてのPepper
ソニーのAIBO(1999年)やホンダのASIMO(2000年)など、これまでもロボットが脚光を浴びることはありましたが、Pepperの登場は来るべき「ロボットの時代」を予感させるものです。
ソフトバンクが今年の6月に、販売を開始した人工知能を搭載したPepperは、ASIMOのように二足歩行こそしませんが、ヒト型ロボットの量産で着実に実績を伸ばし、様々な場面に登場しています。
興味深いと感じるのは広報素材として、供給側のソフトバンクはもちろん、導入側も様々な場面でこれを活用し、連鎖的にニュースとして報道されているという点です。他のロボット、いや工業製品ではこうはいきません。
ロボットが感情を持ち、人間との双方向のコミュニケーションが出来るので、単なるお飾りとしてではなく、お互いの意思疎通のキャッチボールができることが、これまでになかった大きな違いです。
ソフトバンクのHPにあるPepperの説明書きによれば、「人の感情を理解するだけでなく、自らが感情を持ったロボットとして生まれました。人間同様、相手の気持ちや人とのふれあい、周囲や自らの状況に応じて複雑に感情が揺れ動き、それに応じた行動を行なうPepperとの生活をお楽しみください」とあります。
同社が8月に開いた決算説明会では、Pepperが“世界初”のロボットによる決算発表を孫正義社長とともに行いました。報道によると、損社長は「僕以外でソフトバンクの決算発表をしたのはPepperが初めて。非常に感慨深い」とコメントしたそうです。
Pepper人気を当て込んで、番組(テレビ東京の朝の番組)のレギュラーになり、みずほ銀行や渋谷のロフトの接客要員になり、その他のイベントにも引っ張りだこです。他にも、ソフトバンクのショップに設置されていたPepperが蹴られて倒されたことや「(安全機能を高めたため)1キロ太った」ことが記事になるほど。
このようにPepperは、ロボットを身近なものにした立役者といえます。日経トレンディが発表した「2015年ヒット商品」で11位になったり、日経産業新聞の新製品ランキング(第3四半期)」では1位にランクされたのもうなづけます。
筆者自身は生Pepperにめぐり合ったことはありません。それでも報道を見るにつけ、身近な存在になりつつあると感じます。先日、複数の中国メディアの方と話をする機会がありました。Pepperに対する関心は思いのほか高く、実際にPepperの取材をしたという特派員もいました。日本発世界へPepper人気が広がっていくのかもしれません。