マスコミにおけるデスクの役割とは?
新聞を読み比べるとよくわかりますが、記事の扱いが異なる場合が少なくありません。独自ニュースは大きく報じ、後追い記事は地味になります。一斉発表された記事でも、扱いが全く違う場合も少なくありません。
例えば、11月2日にJR東日本と携帯大手3社が、歩きながらスマホや携帯電話を使うのをやめるよう呼びかけるキャンペーンを発表、14日まで行っていました。「やめましょう、歩きスマホ」と記したポスターの掲示やウェットティッシュの配布を行いました。
全国紙では毎日(3日、写真付)、日経(2日夕刊)、産経(3日)が報じましたが、朝日と読売では報じられませんでした。ちなみにテレビでは、日テレ、TBS、テレ朝、フジが報じました。
こうしたニュース価値の判断や記事の扱いで大きな役割を果たすのが「デスク」です。名刺には「経済部次長」などと書かれています。
ある新聞社の方にいわせれば、「優秀なデスクがいれば、現場や部長が無能でも紙面ができる」というほど社内では存在感がある人たちです。次長や副部長というと「お気楽」な立場をイメージしがちですが、新聞社では違います。
最前線で取材に奔走していた記者も「アラフォー」になると、前線の記者を取りまとめるキャップとなり、その数年後にデスクに昇格して、現場を離れることになります。(編集委員などデスクにならない人もいます。)
原稿の手直しはもちろん、「もっと深掘りして」とか「こういう切り口も入れたほうがよい」といった指示を出す立場なので、現場の総監督といえます。記者が意気込んで書いた記事でも、耳が痛い指導を時にはしなければいけないし、他紙に抜かれれば上から突き上げられます。勉強も必要ですし、ストレスフルな仕事でしょう。
日本経済新聞の企業報道部にはデスクが17人いるそうです。このうち、各取材グループ(自動車、機械、素材など18ある)を管理する6人ほどの統括デスクが、キャップから上がってくる出稿予定のネタを吸い上げます。これをローテーションで回している面別のデスクと共有して、記事の扱いを決めていきます。
デスクが記者から上がってくる原稿を、長年の勘と経験で判断するわけですが、原稿はもちろん、その原稿に込めた狙いや熱意を、記者がいかにデスクにプレゼンするかという点も重要だといいます。なぜならデスク自身が、その日の紙面の編集長に記事の意味を理解してもらうプレゼンをして、紙面取りを担うからです。
記者ではなくデスクが「前のめり」することもあるようです。最近会った日経OBの裏話によれば、結局は実現しなかった「某重電メーカーと某造船重機メーカーの経営統合」のスクープはデスクの判断で「イーハンつけた」のだそうです。