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広報パーソンのつぶやき

事業会社の広報担当者と広報コンサルティングの経験からコミュニケーション全般をメインに、ライフスタイル風なネタも。

謝罪会見における涙はNG

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■「謝罪会見」の特集記事

 年末を迎えて、今年の「謝罪会見」に関する特集が組まれています。その一つ日経ビジネスの12月7日号「謝罪の流儀」を興味深く読みました。

 

 旭化成は2002年、同社の発祥の地でもある延岡工場で、電気系トラブルにより火災が発生、人的被害はなかったものの、関連施設の多くが焼失し、周辺住民に避難勧告が出されました。この際の矢継早な対応が評価され、危機管理の優等生とされてきました。

 

 ところが今年明るみになった「横浜市の傾きマンション」での対応では誤算続きでした。横浜市のマンションで、旭化成建材が担当したくい打ち工事のデータの改ざんが発覚した不祥事です。親会社の旭化成の社長が謝罪会見を行いました。

 

■リーダーシップの欠如と映る謝罪会見の涙

 記事によれば、社長が会見の途中でハンカチを取り出して、涙をぬぐうシーンを「NGポイント」と指摘しています。「リーダーシップの欠如」と映ったと。

 

 最近、書店に行くと心理学者アルフレッド・アドラーの本が平積みされ、ちょっとしたブームになっています。それによれば、「悲しいから涙を流すのではない。相手を責め、同情や注目を引くために泣いているのだ」と。言葉通り、社長の涙は「たよりない」印象を与えるものでした。

 

 会見に同席した副社長も、「10年間で建物が傾いたのはこの1件だけ」等と憶測で発言し、状況悪化に歯止めがかからなくなりました。専門家のコメントによれば謝罪会見の目的は、「謝罪」、「弁解」、「正当化」、「否認」の4つあるが、「結果的にどれも物足りない状態に陥ってしまった」と。

 

■問題発覚から1週間後の会見

 会見のタイミングにも疑問を投げかけています。最初の会見は10月20日でしたが、これは問題発覚から1週間後というタイミング。「発覚直後に会見を開き、謝罪の意思を表明するだけでも一定の効果があったのではないか」と。

 

 先の工場火災と違い、販売元(三井不動産レジデンシャル)や元請け(三井住友建設、一次下請けは日立ハイテクノロジー)との調整が不可欠なケースながら、まず「謝罪」、他の目的の「弁解」、「正当化」、「否認」は別の早いタイミングに譲っても良かったのかもしれません。

 

■評価する声も

 お粗末な対応が目立った旭化成でしたが、トップが率先して説明責任を果たした点は評価すべきだと筆者も感じます。他の3社が情報開示に消極的な姿勢を崩さない中で、「当初は批判的だったメディアや世論の中からも旭化成を評価・支持する声が上がり始めた」とも。

 

 涙の謝罪会見といえば、古いところでは山一證券の自主廃業の際の社長、近年ではSTAP細胞騒動での女性研究者が記憶に残っています。多くのメディアに囲まれ、厳しい追及を受ける中で、感情が高ぶるのは致し方ないようにも思いますが、アドラーによれば、「このような感情表現で人を動かそうとする人間は幼稚だ」と厳しく断じています。

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