広報パーソンのつぶやき

事業会社の広報担当者と広報コンサルティングの経験からコミュニケーション全般をメインに、ライフスタイル風なネタも。全国通訳案内士(英語)

2年前の大晦日に行われた午前1時半からの謝罪会見

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■謝罪会見を行う時間帯

 謝罪会見を行うタイミングの難しさは「横浜市の傾きマンション」における旭化成のケースでも触れましたが、時間帯にも注意する必要があります。東芝の不正会計問題が発覚して当時の社長が5月15日に会見を行いましたが、この時の開始時間は午後7時半でした。 

yhkhashimoto.hatenablog.com

 

 「NHKの7時のニュースを避ける」といった“裏の”狙いが考えられますが、記者側からは決して歓迎されない時間設定です。ネガティブな会見は株式市場への影響を避けるために午後3時以降に行われることが多いですが、締め切りの早い業界紙を考慮して午後5時ごろまでに行うのが通例です。

 

■2年前の年末に行われた午前1時半からの会見

 会見時間の設定で思い出されるのが、2年前の12月に冷凍食品への農薬混入事件です。冷凍食品大手のマルハニチログループが製造する冷凍食品に、悪意を持った社員が農薬を入れたというもので、同グループの対応のまずさが話題となりました。

www.nikkei.com

 

 同グループの2014年CSR報告書特別版「アクリフーズ農薬混入事件の記録」に経過が詳しく記載されています。(世間を騒がせた不祥事の後に、このような形の報告書にまとめるのは評価できます。)

 

 実施された記者会見は3回。2013年12月29日午後5時、31日午前1時半、2014年1月25日午後10時半です。大晦日、しかも午前1時半という設定に驚かされます。

 

 31日の朝刊に会見内容を報じることがほとんどできません。従って、31日の夕刊を待つしかなくなります。しかし、大掃除や買い出しなど正月を迎える準備に忙しい人たちにとって、1年の中でもこの日の夕刊ほど印象に残らないものはないのではないでしょうか。

 

 結果としてここで行うしかなかったのかもしれませんが、それにしても「よりによってなぜこのタイミングなの?」と思う人が多いはずです。

 

■ 記者のボルテージを上げないために

 新聞の場合、東京から離れるにしたがって若い「版」になり、締め切り時間も早くなります。自宅に配達される朝日新聞は13版ですが、会社で読めるのは14版といった具合です。夜の記者会見では、時間との勝負になるため、会見に出席する記者と原稿を執筆する記者を分けて対応します。

 

 謝罪会見ではネガティブな話になりがちなので、記事のトーンも批判的なものとなります。会見で本来企業が伝えたいことが十分に伝わらないことにもなってしまいます。

 

 広報担当者としては、自社のネガティブな話は小さく扱ってほしいと願うのは理解できます。しかし、そういう時だからこそ、誠実な対応が必要です。

 

 週刊誌記者の経験談として、「御社の会見が開かれることを聞いた。出席したいので詳細を」と問い合わせたら、「決まり次第必ず連絡します」と答えておきながら、放置された、と。この記者は「(こういう対応をされたら)ボルテージが上がる」と当然の本音を述べています。

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