”強いブランド”を作るときに覚えておきたいこと
■「2位じゃダメなんですか?」、「ダメなんです」
先日、2回に分けて「広報の仕事に興味があるなら、読んでおきたい本」を紹介しました。年末年始は地元の図書館の貸し出し可能冊数が普段の倍なので、新たな知見を得た本が何冊かありました。今回紹介する本もそうした一冊です。
「二番手を目指した時点で、強いブランドづくりは失敗する」と「ブランドづくりの教科書」(2013年)にあります。
読者に「日本で一番高い山は?」と問いかけ、さらに「日本で二番目に高い山は?」と。最初の問にはほとんどの日本人が答えられますが、次の質問は「物知り」でなければ答えられません。(答えは北岳)
同じようにジャガイモの国内生産量の第1位が北海道だとわかっていても、第2位が長崎県であることを知らない人が多いはず。本にある「消費者1000人調査」によれば、北海道の正答率は96%であるのに対し、長崎県は9%にとどまっていました。
■特定カテゴリーで1位をとる
「ブランドづくりで大切なのは『好きか、嫌いか』というモノサシだ」と述べています。「好きな山」というアンケートをとると第1位はいうまでもなく富士山ですが、第2位は阿蘇山。世界有数の大型カルデラ火山という独自のカテゴリーを生み出し、そこで絶大な個性を発揮しているというわけです。
小さな企業が大企業相手に1位をとることは容易なことではありません。しかし、特定カテゴリーならそれが十分可能だと説き、6つの具体的な方向性を例示しています。
- 小さなマーケットにポジショニングする
- カテゴリーを切り取る
- カテゴリーの一部を反転させる
- 特定カテゴリーの高級化市場に特化する
- 特定エリアにフォーカスする
- 特定グループにフォーカスする
阿蘇山はこのうちの「カテゴリーを切り取る」事例です。
■「訴求ポイントの引き算」
「ブランドづくりは引き算である」という章の中で、「訴求ポイントの引き算」について解説しています。モノを売り込む場合、様々な特徴を羅列した結果、何が特徴なのかよくわからないということが往々にして起こりえます。
リリースを作るときでも、「あれもいいたい、これもいいたい」と特徴を盛り込みすぎることがありますが、「逆の発想が必要」と戒めています。
「あなたは、どちらのトマトにひかれるだろうか?」と著者は問いかけます。
A.とても甘く、酸味も高く、うまみもあり、香りも良く、栄養価が高いトマトです。
B.とても甘いトマトです。それだけでなく、酸味もうまみもあり、香りも良く、高い栄養価があります。
「消費者1000人調査」ではBが66%の支持を集め、同じ内容でも伝え方一つで印象が大きく変わることを示しています。他にも「品ぞろえの引き算」や「言葉の引き算」の解説があり、参考になります。
■パブリシティの効用
著者は広報活動のたまものであるパブリシティの効果についても言及しています。「あなたは、どちらのメッセージにひかれるだろうか?」と問いかけます。選択肢の後の数字は「消費者1000人調査」の結果です。
A.(広告)「このトマトは、とても甘い」(32.7%)
B.(新聞記事)「このトマトは、とても甘い」(67.2%)
「メディアでの報道や掲載は、ブランド力の信頼の構築に直結する」と広報活動の重要性について述べ、メディア向けの積極的な働きかけを推奨しています。