多くのCMは「消費者を動かさなかった」?
■「消費者を動かしたCM展開」とは?
CM総合研究所というところが、2015年度(2014年11月~2015年10月)にCMをオンエアした商品・サービス全7591銘柄(1977社、15902作品、東京キー5局)を対象に調査を行って、「消費者を動かしたCM展開」というものを昨年末に発表しました。
好感度を獲得したのは3686銘柄、その後のスクリーニングを経て「消費者を動かしたCM展開」に認定されたのはわずか65銘柄。全体の1割に満たない「狭き門」です。顔ぶれは(予算が潤沢にある)総合飲料メーカーや携帯電話キャリアなどが目立ちます。
この調査結果で気になるのは、65銘柄よりも、その陰で多くのCMは「消費者を動かさなかった」?という事実です。もちろん、商品やサービスそのものにインパクトが足りなかったのかもしれないし、予算の都合で効果を得られるだけのCMを流せなかったのかもしれません。
「消費者を動かさなかった」CMの構成銘柄になってしまった、その他大勢の企業のマーケティング担当者や広告代理店は「一定の効果はあった」、「もっと予算があれば」などと多少の自己弁護をしながら、早く次のアクションに移りたいと感じているのではないでしょうか。
中途半端な広告予算を使って、中途半端な(といっては関係者に失礼ですが)CMを打つより、そこに割いてきた予算を別の手法に切り替えるといった大胆な方針転換が必要な気がします。その一つが広報活動、いわゆる「パブリシティ」です。
■消費者を動かしたヒット商品
皮肉なことに「日経トレンディ」が昨年11月に発表したヒット商品ランキングの8位に入った「明治プロビオヨーグルトPA-3」も、9位に入った「南アルプスの天然水&ヨーグリーナ」もこの68銘柄には入っていません。
「2015年ヒット商品ベスト30」、1位は「北陸新幹線」 | マイナビニュース
これらの商品もひょっとしたらCMが流れていたのかもしれません。(印象には全く残っていませんが。)一時期、それぞれ目立つところに陳列されていたので、そのせいも記憶に残っている面も多少はあるでしょう。
それでも、8位は痛風の天敵であるプリン体に効果がある商品として、9位もヨーグルト味の水という意外感に加え、品薄で一時販売休止になったことで話題になったことは覚えています。筆者も「話のタネに試しに買ってみるか」と手に取った一人です。
この二つの商品は、広報活動を通じて商品の新規性を訴求したり、話題づくりをすることで、広告ではなく「記事化」を促進するというパブリシティがうまく機能した事例です。
パブリシティも万能ではありません。話題づくりがうまくいって、多くの記事を獲得したとしても、あくまで一過性のものだからです。上記の二商品は、どちらも昨年4月に発売されたものですが、店頭で陳列するスペースも以前ほどではありません。そのようなときにこそ、CMが力を発揮するのかもしれません。(責任は持てませんが。苦笑)