不祥事が発覚するきっかけで最も多いのは?
■内部告発から端緒をつかむ
スクープ記事として、不祥事が発覚するきっかけで一番多いのは、「関係者からの内部告発」と全国紙の社会部の記者から聞いたことがあります。もともと付き合いのある人から寄せられる情報の場合もあるし、匿名の投書によることもあると。
ある食品工場のケースでは、差出人の明記のない封書に、「(会社名)の●●工場が消費期限の過ぎた牛乳を使って菓子の製造している」という主旨の詳細な投書、いわゆる「端緒情報」が届けられたところから、周辺取材が始まったと言っていました。
周辺取材では、投書の内容に虚偽がないか、どのような登場人物がいて、菓子の製造工程はどうなっているのかといった情報収集を丹念に拾い集めます。この段階で当該企業に知られたら隠ぺいされかねないので、慎重に行います。
拾い集めた情報をもとに裏取り、つまり登場人物や責任者といった関係する人物に一斉にあたっていきます。ただ、この時点でも当該企業の広報には通さずに進めます。得られた複数の証言により、事実関係が明らかになれば、それを元に筋道を立てて、どのような記事にしていくかが部内で決められます。
内部告発の場合、同様の投書が複数のマスコミに届いている可能性もあります。このため、慎重ななかにもスピードが求められます。記者は「抜いた抜かれた」を繰り返しているので、「つかんだネタを確実に仕留めなければ」と、力が入ります。
■不祥事では最終局面まで広報は「蚊帳の外」
当該企業に「直接取材」を行うのは最終局面。取材結果をもとに事実関係を最終確認し、公式の見解を得ます。この時点では既に一定の裏付けを終えているので、明らかな虚偽説明はそうとわかってしまいます。
当該企業といっても、広報を通さずに夜回りなどで経営トップに直接ぶつけることが通例です。しかも、掲載日の前日といった直前のタイミング。反応を見るのはもちろんですが、「明日の朝刊で記事になります」と通告することで、心の準備をしてもらう意図もあるようです。
ここまで来たら、広報担当者としては「ジタバタしてもしょうがない」と腹をくくるしかありません。どんなに頑張っても止めようがないからです。
■覚悟を決める
掲載日の早朝には、抜かれた他紙からの容赦ない後追い取材にさらされることになります。覚悟を決めて、ネガティブな状況からいち早く打開するためのの準備をすべきです。
不祥事は社内の関係者が把握していることがほとんどなので、書かれている内容が「事実なのか、間違いなのか」を記者に明確にする必要があります。ここでしどろもどろしていると、「まだ何か隠しているんじゃないか」と邪推され、報道にも熱を帯びてきます。
謝罪会見を実施をすべきか、という判断はケースバイケースですが、後追い取材の量が一つの判断材料になります。インターネットが普及している現状を考えると、「会見実施を前提に準備」することが少なくとも広報担当者には求められます。