失敗からどう学ぶべきか?
■失敗を「仮想体験」する
たった一つの不祥事や騒動でそれまで築いてきた企業ブランドが一瞬にして崩壊してしまうことが後を絶えません。最近のタレントの例のように個人にも同じことが言えます。
誰にも大小の失敗はつきものですが、失敗からどう学ぶべきか?という問いの答えが「使える失敗学」(2014年)にありました。それによれば、「自ら最小の失敗を体験して知識を得ることに加え、他人の失敗例から上手に知識を得ることに尽きる」と。
「失敗学」に関する書籍も多いし、企業の不祥事報道記事を注意深く追っていけば、「他人の失敗例」の知識を吸収することはある程度可能です。しかし、良くも悪くも他山の石。時間がたてば忘れることも多いでしょう。
そこで重要になのが「失敗を仮想体験する」ことです。先の本でも「実際に身をもって感じる『体感学習』」、「他人の失敗から得た知識を活用する能力」が必要だと指摘し、「他人の失敗をシミュレーション」してみることを提案しています。
筆者も企業の不祥事を想定した記者会見のシミュレーショントレーニングを企画・運営することがありますが、一連のトレーニングが終わった後の参加者聞くと、「勉強になった、実際に体験してみないとわからないこともある」と口をそろえていいます。
■「千三つ」に対する欧米と日本の認識の違い
欧米では1000件のうち3件のミス、つまり品質管理でいう不良品率0.3%であれば、統計的に残りの99.7%は問題がないとして、良しとすると聞いたことがあります。日本の場合、不良品が発生することを問題視して、徹底的に不良品率ゼロを追求するのと対照的です。
日本では大うそつきのことを「千三つ(1000に3つしかほんとのことを言わない)」といいます。また、「1000に3つしか商売が成立しない」ことから、土地の売買や貸金の仲介をする人を指す言葉でもあります。
昨年9月にドイツのフォルクスワーゲンによるディーゼル車排ガス不正問題が発覚し、ホームページ上で謝罪声明を行いました。その後、辞任するにあたりCEOは「私自身が過ちを犯したわけではないが、会社の利益のために決断した」と釈明しています。日本では考えにくいメディア対応です。
先に紹介した本には次のように書かれています。
「人間の行動の結果は二つしかない。目指した目標を達成するか、次回の目標達成につながる重要な教訓を学ぶのかのどちらかだ。失敗が多くのことを教えてくれるのは、自分が学ぼうと思ったときだけである。」