広報パーソンのつぶやき

事業会社の広報担当者と広報コンサルティングの経験からコミュニケーション全般をメインに、ライフスタイル風なネタも。全国通訳案内士(英語)

ネイティブ広告は「広告」ときちんとクレジットをつけて出したらよい

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■サクラ投稿に釣られる若者と振り込め詐欺に騙される年配者

 宣伝と気づかれないように記事などを装いながら、商品やサービスを宣伝する「ステルス・マーケティングステマ)」。2012年ごろからよく使われるようになった言葉です。

 

 この年、飲食店口コミサイトの口コミ評価を上げるために、業者が飲食店から金銭を受け取って評価アップを図ったことが問題になりました。また、同じ年の末には、ペニーオークション詐欺が発生、胡散臭いオークションサイトに、複数の芸能人が報酬を受け取って宣伝に加担(落札していないのに自身のブログに「落札した」と書くとか)しました。

 

 口コミやブログへの”サクラ”投稿を真に受けて、カモにされてしまう人がある数いるという事実は、どこか高齢者を狙った「振り込め詐欺」に通じるものがあるようです。

 

■くすぶるステマ問題

 昨年秋、朝日新聞週刊ダイヤモンドに、ネットメディアにおいてステマが横行している事実に焦点を当てた記事が出ました。広告である旨の表記がない、ネイティブ広告を一般記事の間に忍び込ませる手法は、批判もやむを得ません。

yhkhashimoto.hatenablog.com

 

 「実は広告なのにそうでないようにみせかける」と読者の食いつきが変わるのは当然。しかし、それはフェアではない。読者は広告をわざわざ読むためにアクセスしてくるはずがありません。決められたルールを破るのは読者に対する明らかな背信です。

 

 ただ内側を知っているものとして言えば、「ネイティブ広告」は広告を出す側、掲載する側、それを仲介する広告代理店やPR会社のいずれにとっても、”おいしい”話だということもわかります。

 

 少しでも多くの掲載を稼ぎたいクライアント側にすれば、通常広告に比べ、単価が安いうえに一般記事風の体裁。とくれば、予算があれば当然の「ゴーサイン」。媒体側にとっても貴重な収益源なので、腕まくりをしながら「おいでおいで」。PR会社も同じ。

 

 その結果、記事が「ヤフートピックス」に転載でもされたら、大変です。膨大なページビューにつながり、三社とも万々歳というわけ。その機会を奪われかねない状況は避けたい、という本音だと思います。

 

 明らかな提灯記事でも、「嘘を書いているわけじゃない」、「記事によって読者が不利益を被る訳でもない」ことを根拠に法的にはグレーゾーンのようです。でも、「読者目線に立っている」とはいえず、「ネイティブ広告は広告ではない」という主張は間違っています。

 

 月刊情報誌「FACTA」2月号の巻頭特集でも、この問題を大きく取り上げています。その中に大手携帯電話キャリアの元社員のコメントとして、「今となってはステマだが、社内に悪いという意識は全くなかった。マス広告に比べ単価が数十万円から100万円程度なので、現場が自由にやっていた感じだ」とあります。これが実感なのだと思います。

電通「ステマ」隠蔽の馬脚:FACTA online

 

 ステマ広告によって”空気感”とやらを醸成するのは広報ではないし、フェアでもない。これ以上おかしなことが蔓延しないように、「広告」ときちんとクレジットをつけて出したらよい。そう思います。

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