広報パーソンのつぶやき

事業会社の広報担当者と広報コンサルティングの経験からコミュニケーション全般をメインに、ライフスタイル風なネタも。全国通訳案内士(英語)

広報にも「フリーエージェント社会の到来」と15年前の本にあった

■68歳のフリーエージェントおばあちゃん

 「フリーエージェント社会の到来 新装版」(2014年)を読み返しました。初版は2001年ですが、15年経った今でも新鮮な内容にあふれています。フリーエージェントというとプロ野球自由契約選手を想像しますが、英和辞書によれば「自由(自主的)行動者」という意味もあります。

 フリーエージェント社会の到来 新装版---組織に雇われない新しい働き方

 著者のダニエル・ピンクによれば、フリーエージェントとは、「インターネットを使って、ひとりで働き、組織の庇護を受けることなく自分の知恵だけを頼りに、独立していると同時に社会とつながっているビジネスを築き上げた」人々のこと。フリーランス、臨時社員、そしてミニ起業家の三つに大別できると述べています。

 

 第一章の冒頭では、Grandma Betty(ベティおばあちゃん)を取り上げています。夫が33歳の若さで、二人の息子を残してこの世を去ったあと、生活を支えるために銀行やアパレルメーカーなどに勤めます。しかし、会社の移転で退職を余儀なくされ、1998年、68歳でGrandma Betty.comを立ち上げます。(現在休止中?)

 

 ベティおばあちゃんが行ったのは、彼女が有益だと思ったサイトの整理。それを息子たちがウェブサイトに仕立て、ビジネスとしました。「組織の庇護を受けることなく、自分の知恵だけを頼りに、独立していると同時に社会とつながったビジネス」を築き上げます。いわば「まとめサイト」のはしりといえるものです。

 

 エピローグには、その後Grandma Betty.comがIT会社に買収されたことが書かれています。それまでに2件の買収提案を断っていましたが、「今度の人たちはいい人に見えたし、金額も悪くなかった」ため、売却することにしたとコメントしています。

 

 彼女は買収承諾の条件として、「サイトのコンテンツの決定権を完全に持ち続けること」、「古くからのファンが戸惑わないようにサイトのURLを変えないこと」を挙げたそうです。

 

■広報のフリーエージェント

 17年PR会社で働いた後に、フリーエージェントになった男性についての記述もあります。90年代後半の劇的な変化として「(PR)会社を辞めて、フリーランスになる人が増えはじめた。とくに経験豊富で優秀な人材がフリーになりはじめた」と。

 

 ピンク氏は「いくつかの点で既存のPR会社より優位に立てる」と指摘しています。それは、「会社がスリムなため、経費がかからない」こと、そして「(暇にしている人に仕事が行くことになるが、)それは必ずしも適任の人物とは限らない」こと。既存のPR会社に身を置いた経験のある筆者としては、深くうなずける点です。

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 「顧客がPR会社に仕事を依頼するのは、頭脳を買いたいからだ」と元PR会社社員は言い、「その頭脳の持ち主が特定のオフィスに出勤していようといまいと、依頼主には関係ない」とも。「広報のフリーエージェント」という考え方が、米国では早くから根付いていたことに驚くと同時に、「こうでなきゃ」とも思います。

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