広報パーソンのつぶやき

事業会社の広報担当者と広報コンサルティングの経験からコミュニケーション全般をメインに、ライフスタイル風なネタも。全国通訳案内士(英語)

不祥事が発覚した企業が起こしやすい二つの行動

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■「謝罪に関する二つの事実」

 「ハーバードビジネスレビュー」の2016年3月号のテーマは「コーポレートガバナンス」。この中にハーバード大学などの先生による「企業が正しく謝罪する方法」という13ページのレポートが載っていました。

ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2016年 03 月号 [雑誌] (【特集】コーポレートガバナンス)

 「謝罪に関する二つの事実」を挙げています。不祥事が発覚した時に、企業は「何を考え、どのように行動しがち」なのかを言い当てています。洋の東西を問わず共通した課題のようです。

 

 一つ目は、「私たち人間には申し訳ないと謝るのを先送りしたい、避けたいと考え、そのための理由を探そうとする傾向がある。謝罪するのは気分が悪く、リスクを伴うように感じられる。(中略)ミスを指摘されると防御本能が働き、自分の立場を主張し、他人に責任を転嫁する」。

 

 二つ目は、「企業は法的な視点から状況を評価する傾向が強い。企業弁護士は法律違反がなかったかどうかにこだわり、謝罪は相手に共感しようとする努力ではなく、責任の承認と解釈されかねない(よって会社が訴えられるおそれがある)と経営者に警告するかもしれない。この違いは大きい。なぜなら、効果的な謝罪は相手の気持ちに働きかけるものであり、言い分を立証するものではないからだ」。

 

 つまり、企業というものは「自分の立場を主張し、他人に責任を転嫁する」もの。そして、「法的な視点から状況を評価する傾向にある」ということ。この二つの前提に立って、どう対処すべきなのか、謝罪すべきか否か、を考えるべきだと述べています。

 

■謝罪会見に弁護士の同席は不要 

 不祥事ではありませんが、コンサルを行った企業のトップと顧問弁護士が同席する会見に立ち会ったことがあります。「隣にいるだけで安心」とその会社のトップが考えたようです。筆者は同席の必要性を感じませんでしたが。

 

 記者側からすれば、弁護士がいようといまいと重要ではありません。なぜなら、話を聞きたい相手はあくまでトップだから。厳しい質問に言葉を詰まらせて、弁護士に助けを求めたりすると、それだけで「リーダーシップの欠如」として非難の口実を与えるだけです。

 

 先のレポートのように、謝罪会見はあくまで、「相手の気持ちに働きかけるものであり、言い分を立証するものではない」はず。記者は、法律違反をおかしたことよりも、そのような事態を招いたことに対する道義的責任を問いただしているのです。そう考えれば、「法的に問題がない」というような釈明はありえません。

 

 また、「報告を受けていない」ことを質問されることも起こりうることです。しかし、トップである以上、「知らなかった」ではすまされず、責任逃れとして受け取られます。「情報が速やかに入る体制を今後徹底してまいります」とかわす工夫が必要です。

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