「バカと死人は自分の信念と意見を決して変えない」という格言
■「満ち足りた人生を送るための三つの秘密」
人生にむなしさを感じた事業家が、「満ち足りた人生を送るための三つの秘密」を知っているという禅の老師を探す旅に出ました。苦労してようやく出会った老師に、その質問をぶつけます。
その答えは「看(み)よ、看よ、看よ」。
ここでいう「看る」とは「注意深く見る」こと。「プラス思考にするためには、新しいことに自分の心と意識を集中させる。また、よく知っていることについても、新しいやり方でそれを見直す方法を考え出す。柔軟性がない人は、自分の認識を変えるのに努力と勇気が必要だろう。だが、そうして、新鮮な方法で人生を経験し、自由時間を味わえるようになる」。
これは「働かないってワクワクしない?」(2003年)に書かれているエピソードです。誤解を招きやすいタイトルの本ですが、内容は気づきにあふれている良書です。
「看よ、看よ、看よ」。広報でも忘れたくない警句です。従来の4マス(テレビ、新聞、雑誌、ラジオ)への向き合い方が、10年前とは劇的に変わっているのに、やっていることが今までと変わらなくていいはずがありません。
紹介したこの本にも、「柔軟性がないと、急速に変化する世界に適応できなくなる」。さらに、「最も変化が必要な人が、最も変化に抵抗する」とも。
■従来からのやり方に固執する広報からの脱却の必要性
新聞やテレビの掲載を目指す活動が広報の重要な役割です。そこに異を唱えるつもりは全くありませんが、従来からのやり方に固執し、そこからブレークスルーしようという気概をもった人が、意外に少ないことを痛感させられることがあります。
例えば、ソーシャルメディアへの取り組み。「炎上リスクがある」とか「メンテナンスが煩雑」、「費用対効果が不明」といった二の足を踏む理由を、実際に聞いたことがあります。しかし、筆者に言わせれば、単にやらない理由を見つけているだけ。
「最も変化が必要な『企業』が、最も変化に抵抗する」です。「自分たちは間違っていない。常に正しいことを考え、実行している」と思わず、「変われることイコール強さと成長の意欲の表れ」と考えてほしい。
■「自分は間違っていない」のか?
誰にも「苦手な人」がいます。そういう人に共通するのは、「自分は間違っていない」と考えているフシがあるということ。聞く耳を持たずに、「正しいことを考え、それを行っている」。筆者にも、恥ずかしながらそう考えていた時期があったことを白状します。
「バカと死人は自分の信念と意見を決して変えない」という格言があるそうです。
また、米経済学者のガルブレイズは次のような言葉を残しています。(どちらも本からの引用です。)
「自分たちの考え方を変えるか、変える必要はないということを証明するか、という岐路に立たされたとき、ほとんどの人々はすぐに、変える必要はないということを証明するのに大忙しになる。」