誰にでも逆境や困難な時はある。そんな時のヒント100か条を載せた一冊
■「小さいことにくよくよするな!」
朝日新聞では毎週日曜日に本の紹介や書評を掲載しています。4月17日付けの記事が興味を惹きました。「(悩んで読むか、読んで悩むか)人生の転機は最悪の形でやってくる」というタイトル。相談員はタレントの石田純一氏。
相談者は、48歳の女性で、「53歳の夫が失業して引きこもっている」として、こんな時だからこそ前向きになれる本を教えてほしいという内容。石田氏が勧めた本が「小さいことにくよくよするな!」(1998年)。
石田氏は20年前の「不倫は文化」発言で「すっかり仕事を失った」過去があります。そんな時にこの本と出会い、「ほしいものよりもっているものを意識する」ことを実践するために「本を読み、体を鍛えた」と。
筆者のような”バブル世代”にとって、石田氏は(今では死語?に近い)「トレンディドラマ」の主役を何本も務めるよう存在でした。そんな絶頂期の不用意な発言によって、一気にアゲインストの風が吹き荒れました。
■深呼吸をして原点に還ろう
深呼吸をして持っているものに目を向ける。そうすると、ほしいものは自然に向こうからやってくる。本には、「原点に還る」ことの大切さが書かれています。さらに、逆境や困難な時の礎となりそうなヒント100か条が載せられています。
例えば「この一幕もまた過ぎていく」。「物事にはすべて始まりがあって終わりがある」と説く。「苦痛や深いを味わっているときは、やがては過ぎていくと悟っておく。そのことを心に留めておけば、逆境にあっても落ち着いてられる」。
「違う視点の記事や本を読もう」というのもあります。信念を曲げることはないにせよ、「新しい考え方に心を開く」ことが大切だと。「バカと死人は自分の信念と意見を変えない」という格言がありますが、ここでも同様の主張が読み取れます。
■「セルフ・エスティーム」という言葉
「人間はもともとある程度のストレス耐性があるもの」だといいます。しかし、ストレスの原因を考えるといたたまれないなら、それ以上自分に厳しくしないほうがいい。こうした時に覚えておきたいのは、「セルフ・エスティーム(self-esteem)」。
「働かないってワクワクしない」(2003年)で初めて知った言葉です。「自分を大切に思う気持ち」や「ありのままの自分を受け入れ、それを尊重する気持ち」のことです。別の本には「自己肯定感」とか「自尊感情」を日本語訳としています。(英和辞典にはうぬぼれや自尊心のような意味も。)
「自分が自分であって大丈夫」と「生きづらい時代と自己肯定感」(2015年)の中にありますが、同時に「相手を主体として尊重する構え」つまり、「あるがままに受け止めようとする構え」が大事。
この部分を読んで、Billy Joelの"Just The Way You Are"という曲を思い出しました。邦題は「素顔のままで」。「あるがままでいんだよ」という気持ちを描いた傑作バラードです。
Billy Joel - Just The Way You Are (Official Video 1977)
4月21日の朝日新聞オピニオン欄のテーマは「職場のストレス」。三人の識者のインタビューが掲載されていますが、そのうちの一人の「自分を大切にするという視点が、ストレスを乗り越える近道だ」と述べていますが、全く同感です。