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広報パーソンのつぶやき

事業会社の広報担当者と広報コンサルティングの経験からコミュニケーション全般をメインに、ライフスタイル風なネタも。

不祥事でも気を付けたい公表のタイミング

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■公表のタイミングで大きく変わるニュースの扱い

 「疑惑や不祥事は企業が把握していることが多く、自ら解明し公表したほうがよい」という主旨の話を、何度かマスコミの方から聞いたことがあります。その通りだと思いますが、公表のタイミングによって、大きくニュースの取り扱いが変わることも知っておくべきです。

 

 3年前に阪急阪神ホテルズが運営するレストランなどで、実際のメニューとは異なる食材が使用されたことを公表したことがありました。その事実が公表されたのは、2013年10月22日のこと。会見を行ったのは社長ではなく、なぜか営業企画部長。

 

 部長は会見で「メニュー全体に責任を持つ者がおらず、組織全体に問題があった」、「役員など関係者の処分を検討する」と表明したとされます。「組織全体の問題」、「関係者の処分を検討」と会社の非を認めました。

 

 しかし、「なぜ社長が出てこないのか?」と多くのマスコミが感じたはずです。社長がこの時点で出て来たら、その後の展開も変わったかもしれないと感じるほど、不可解なものでした。

 

 社長が会見に姿を現したのは、2日後の24日。社長自身を含めた関係する役員の処分などが発表されました。しかし、批判は沈静化するどころか、「メニューの誤表示」との主張を変えることはなく、「食材の偽装」問題としてセンセーショナルに報道するマスコミとの対立が鮮明になりました。

 

 28日に再び社長が会見を行いましたが、「偽装と受け止められても仕方がない」としながらも、「(不当な利益を得るための)偽装ではない」とも述べました。それでいながら、対象メニューの利用者に代金の返金を応じるなど、やはり「偽装」なのではという疑念をもたらす結果に。この日の会見で社長は辞任を表明しました。

yhkhashimoto.hatenablog.com

 

■前例にとらわれるな

 実は、阪急阪神ホテルズの問題の4か月前、6月17日に、プリンスホテルも「食材とメニュー表示の違い」を公表しています。さしてマスコミに取り上げられることもなく、話題にもなりませんでした。阪急阪神ホテルズプリンスホテルの前例に倣い、同じように公表しましたが、世間の受け止めに大きな違いが生まれてしまいました。

 

 「企業はなぜ危機対応に失敗するのか」(2013年)でその違いについて、「プリンスホテルの事実公表の時点と、阪急阪神ホテルズの事実公表の時点とでは、マスコミの企業不祥事に対する報道姿勢が大きく異なっていた」と指摘しています。

企業はなぜ危機対応に失敗するのか―相次ぐ「巨大不祥事」の核心

 企業の不祥事に対する報道姿勢が厳しくなったのは、その年の7月にカネボウ化粧品が美白化粧品の自主回収を発表してからだと。10月までにJR北海道みずほ銀行の不祥事も相次いで発覚しました。

 

 前例に倣って公表することで、乗り切れると考えていた阪急阪神ホテルズでしたが、マスコミの厳しい視線が集中するタイミングに公表した上に、稚拙な広報対応が加わり、“命取り”に。

 

  そのあと、他のホテルチェーンも雪崩を打ったように同様の発表を行いましたが、同社だけが”人身御供”にされてしまいました。公表を遅らせることは得策ではないにしても、企業に対する厳しい目を持っているタイミングかどうか、ということも見定める必要があるという教訓です。

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