広報パーソンのつぶやき

事業会社の広報担当者と広報コンサルティングの経験からコミュニケーション全般をメインに、ライフスタイル風なネタも。全国通訳案内士(英語)

アメリカでよく売れている二つの雑誌

■インテリア用品として売れている「ナショナルジオグラフィック

 アメリカと日本の書籍・雑誌文化の違いについて、アメリカで最も売れている雑誌の一つ「ナショナルジオグラフィック」を例に面白い記述がありました。「出版・新聞絶望未来」(2012年)という本です。何ともおどろおどろしいタイトルですが。

出版・新聞絶望未来

 本によれば、「ナショナルジオグラフィック」は毎月、500万部も売れている雑誌。その理由を探ろうと、著者がアメリカで雑誌の編集者に問うたところ、こう答えたといいます。「あれは雑誌として売れているのではない。インテリア用品として売れているのだ」。

NATIONAL GEOGRAPHIC (ナショナル ジオグラフィック) 日本版 2016年 6月号 [雑誌]

 

 一度でも雑誌を読んだり、ウェブサイトを覗いたりしたことがある人ならわかりますが、写真が最大のウリ。つまり、読むものではなく「パラパラめくって楽しむもの」というのがこの雑誌の特徴。ゲストを自宅に招いたときに、「飲み物を出す間に、テーブルの上に置いてある雑誌をめくってもらう」ために購入しているのだと説明されたとあります。

 

 こういう雑誌がテーブルに無造作に置いてあると、その家庭はインテリだとゲストが思ってくれる効果もあるらしい。雑誌にそうした使い方があるのは知りませんでしたが、日本に比べて住む家も広いだろうし、ゲストを招いたホームパーティも珍しくないので、何となく合点がいきました。

 

■「AARPマガジン」という米最大のモンスター雑誌

 「ナショナルジオグラフィック」以上にアメリカで読まれている雑誌として、「AARPマガジン」というのがあります。”American Association of Retired Person”(全米退職者協会)という、全米有数の無党派NPOが発行する月刊誌。実に2千万部という驚きの発行部数です。

www.aarp.org

 

 首都のワシントンDCに本拠地があり、高齢者政策に目を光らせ、ロビー活動でも多くの成果を上げているそうです。

 

 ウェブサイトを見ると、会員資格は50歳以上というだけ。年会費はわずか16ドル。(退職者であるかどうかは会員登録にはあまり関係ないようです。)会員数は約3800万人。洗練されたデザインなので内容をよく読まないと、とてもシニア向けとは思えません。

 

 日本ではこうした高齢者向けの全国組織は聞いたことがありません。シニアをターゲットにした雑誌は日本にもいくつか思い浮かびますが、「AARPマガジン」はけた違いの影響力があることがわかります。

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