二本の「ソーセージ」の記事で感じた広報活動の原点
■二本の「ソーセージ」記事
5月29日の朝日新聞の地方版(ちば首都圏)に「ソーセージ」の話題が二本載っていました。一つは富津市の「マザー牧場」内に「手作りハム・ソーセージ工房」が3月に完成し、その工房の責任者にスポットをあてた記事です。
工房の責任者は、ソーセージをマザー牧場で作り始めて25年以上という大ベテランですが、ソーセージの世界は奥が深く、長く試行錯誤が続いたといいます。ドイツ暮らしの経験がある家族に、「ドイツを思い出した」とソーセージの味を認めてもらうようになったのは、最近のことだと。
その人気はじわじわと広がり、「ここ4年間の売り上げは毎年、前年の3割増しを繰り返している」。昨年は「日本ギフト大賞2015 千葉賞」を受賞しました。こうした追い風もあって、1千万円を超えるという最新機器をこの3月に導入、生産可能量はこれまでの3倍になったと。
もう一つは、地元の公園で開かれた「習志野ソーセージ」のイベントに関するもの。筆者にとって、初耳の「習志野ソーセージ」。第一次世界対戦中に、日本軍の捕虜になったドイツ兵が市内にあった捕虜収容所に製造方法を伝えたことが誕生のきっかけだそう。そういう施設が日本にあったこと自体が驚きですが。
塩分が濃いのが特徴らしくビールには合いそうです。地域団体商標登録を出願したことを記念して、地元の商工会議所が企画しました。
地方版とはいえ、どちらの記事も写真付きで大きく紹介され、近くに住む読者なら、「へぇ、そうなんだ。ちょっと行ってみようかな」と思わせる内容。主催者側からすると大成功の記事です。
特に前者の記事では、よくある設備投資として終わってしまう可能性のある話に、ベテランのソーセージ職人の人となりを掛け合わせて「ストーリー」としてうまく伝えています。
■広報活動の原点は現場を取材してもらうこと
この二つの記事を取り上げたのは、「広報活動の原点は現場を取材してもらうことにある」と感じたからです。広報活動というと、反射的にプレスリリースを想起しますが、これらの記事がもし、現場の取材を行わずにリリースだけによるものだったら、無味乾燥なベタ記事だったはず。
おそらくこれらの記事も事前に、「手作りハム・ソーセージ工房」が3月に完成したことや、「習志野ソーセージ」のPRイベントが5月28・29日に地元の公園で開かれるという情報がリリースや案内状でもたらされていたのでしょう。
そこで記者が関心を持ったか、あるいは主催者が熱心に売り込んだのかはわかりません。しかし、どちらにしても、リリースや案内状をきっかけに「記者に面白がってもらい、現場取材に来てもらう」ことができたことが、今回のような記事につながったのだと思います。