「入門書」をどのように選ぶべきか?
■「入門書」のすゝめ
新しい仕事や勉強に取り組むとき、新しいチャレンジを始めようとするとき、あるいは何かの環境変化が自分や周りに迫っているときに、入門書や手引書はかなり役に立ちます。人によっては、こうした知識をインターネットから得ることも多いでしょう。でも、やはり本から得られる情報の方に一日の長があると感じます。
立花隆の「『知』のソフトウェア」(1984年)に「よき入門書の4条件」というのが書かれています。
- 読みやすくわかりやすいこと
- その世界の全体像が的確に伝えられていること
- 基礎概念、基礎的方法論などがきちんと整理され提示されていること
- さらに中級、上級に進むためには、どう学んでいけばよいか、何を読めばいいかが示されていること
そして、「定評ある教科書的な入門書を落とさないようにすると同時に、新しい意欲的な入門書も落とさないようにする」ことも大事。前者なら版数の重ね方、後者は「はしがき」などで判断できると。
入門書を読む必要が生じた場合、自身も続けて何冊か読むことを心がけていますが、立花氏も「入門書を続けて何冊か読むことが、その世界に入っていくための最良のトレーニングになる」と同様なことを効用として述べています。
新たに広報担当者になったときにも、こうした入門書を手に取ったことを思い出します。立花氏のいう、「定評ある教科書的な入門書」です。それ以降、仕事で必要というだけでなく興味や関心のある分野なので、今までずいぶんと関連書籍を読んできました。
■「情報選択の時代」という本
広報に限りませんが、理解や知識が深まっていくと、歯ごたえがないと感じる本も増えてきます。一方で新しい気づきを得られる本も。新たに出版された本よりも、読む機会に恵まれなかったり、その存在を知らなかったり、といった本が多いですが。
そうした本の一つが「情報選択の時代」(1990年)です。すでに絶版になっているようで、図書館の閉架にありました。著者は、アメリカの建築家でグラフィック・デザイナー、TEDの創設にもかかわったリチャード・ソール・ワーマン。
今日のようにインターネットが普及する以前の本でありながら、内容は現代にも通じるもの。「データ量が多いことと、より良い情報とは一致しない」、「どこか新しい世界にたどり着くにも、まずいまの自分の場所から出発しなければならない」、「学習とは何が面白いかに気づくこと」といった学びの多い内容が網羅されています。
原題は「情報不安症(Information Anxiety)」。情報社会に不安を感じる人に向けた格好の「入門書」です。