紙の新聞は70代と「心中」してしまうのか?
■70代と心中する「紙」の新聞?
以前、NHK放送文化研究所が5年ごとに行う、「2015年国民生活時間調査」をブログで取り上げました。各年代とも新聞の行為者率(1日の中で15分以上見ている人の率)が減少していると。
情報誌「FACTA」の6月号で興味深い記事がありました。「70代と心中する『紙』の新聞」で、上記の調査結果を踏まえた独自の解説を行っています。グラフを見るとわかりますが、今や最も新聞を読む世代は「70歳以上」。行為者率は59%(1995年61%、以下同)です。2位は60代で55%(70%)、3位は50代で39%(70%)。年代が下がるほど行為者率の減少も顕著です。
「FACTA」によれば、「70歳以上の中核をなす70代はこの40年間最も新聞を読んできた人たち」だと指摘しています。1975年と1985年のデータも載せて、常に新聞を読む割合の頂点を形作ってきたことを示しています。次の調査が2025年であるということを考えると、「70台と心中する」という指摘はある意味、的を射ています。
■電子版に舵を切る訳にもいかない日本の新聞業界
新聞離れの流れを食い止めようと2013年に日経を皮切りにスタートした電子版ですが、その流れを食い止めるまでには至っていない。紙の方が、利益が上がる現状では、デジタルに大きく舵を切る訳にもいきません。
朝日、毎日、日経は電子版だけの購読が4000円前後でできますが、読売新聞は今でも、電子版だけの購入はできません。そんな中で、産経新聞はスマホがタダ、タブレットやパソコンは一応有料ですが、他社と比べても半分以下で購読できます。
状況は米国の新聞業界も同じですが、デジタル化の流れに掉さすように、独自の戦略を打ち出しています。
ニューヨーク・タイムズは、デジタル化を進める同社のサイトを、広告ブロックをかけたブラウザからは閲覧できないようにする試みや。同社のブランド力を活かして、映画やレストランや書評などをアーカイブして関連ビジネスにつなげようという試みを行われています。
部数減が続いているとはいえ、購読料収入の多い日本の新聞業界では、デジタルに大きく舵を切るのはたやすいことではありません。個人的には紙の新聞は残してほしいと感じていますが、10年後の絵姿を当事者たちはどのように描いているのでしょうか。