各社で微妙に異なるオバマ大統領の広島演説の日本語訳
新聞の読み比べをして、かつそれぞれを丁寧に熟読しないと気がつかないことがあります。それを先日の朝日新聞6月24日付「池上彰の新聞ななめ読み」で教えられました。5月末に来日したオバマ大統領の広島演説を取り上げたコラムです。
オバマ大統領の演説はもちろん英語で行われましたが、米国政府や米国大使館などが日本語訳を用意しているものだと勝手に思っていましたが、そうではない。新聞社それぞれが独自に和訳をして掲載しています。考えてみれば当然なのでしょうが、新聞を読み比べないと気がつかないことです。
オバマ米大統領・広島訪問 スピーチ全文(英語) | 沖縄タイムス+プラス
コラムでは朝日、毎日、読売、日経、中国新聞(共同通信)の日本語訳を紹介し、その違いを解説しています。オバマ大統領は演説の冒頭で次のように話しました。
Seventy-one years ago, on a bright cloudless morning, death fell from the sky and the world was changed. A flash of light and a wall of fire destroyed a city and demonstrated that mankind possessed the means to destroy itself.
この中で、原爆が投下されたあの日について、”bright cloudless morning”と述べています。朝日は「明るく、雲一つない晴れ渡った朝」、毎日は「晴天の朝」、読売は「快晴の朝」、日経は「よく晴れた雲一つない明るい朝」、そして中国新聞は「雲一つない明るい朝」。たった三つの単語ですが、訳し方は見事に違います。
"death fell from the sky"という表現も、「死が空から降り」(朝日)、「空から市が降ってきて」(毎日)、「空から死が落ちてきて」(中国新聞)というように。池上氏も「元の英文は同じなのに、日本語訳はこんなに異なる」と述べています。
■新聞読み比べの効用
池上氏は全国紙など8紙を購読し、小学生新聞2紙も買って読んでいるそうです。仕事のためとはいえ、多忙を極める中で、これだけの新聞を毎日チェックする時間を確保していることに頭が下がります。
新聞の併読の効用を同氏の著書で読んだことがありますが、時間もお金も限られている多くの人にとっては容易なことではありません。それでも、たまに読み比べをすると意外な気付きが多いのも事実。
たとえ自分で買わなくても、職場や図書館でもできること。時間を作ってみる価値はあります。何といっても新聞は情報の宝庫ですから。