「忘れないようにする」ことと「活かす」ことの違いを知る
■講演で聞いたことを忘れないようにするには
これまでマスコミの方の講演を聞く機会が比較的多くありました。そこで得た知識を忘れないようにするためにしていることがあります。難しいことではありません。それは「聞いた内容や気がついたことを書き起こすこと」。そして、それを「誰かに伝えること」。
聞くだけではいずれ忘れてしまうし、殴り書きで書いたメモも時間がたてば、何を書いたかすら思い出せない。だから早めに書き起こすべき。人は気づきや知識を得るために講演やセミナーに参加しますが、残念なことにそこで得たことを活かす術がないまま、そのうち忘却の彼方に飛んで行ってしまうことが多い。
ためになったと感じた本でも同様です。
そこで、書き起こす。体裁はもちろん自由。忘れないようにするためなので、聞いたこと全てである必要もないし、中身の薄い内容なら、数行でもいいかもしれません。
■「忘れないようにする」ことと「活かす」ことの違いを知る
ここで注意したいのは、書き起こすことで「聞いたことを忘れないようにする」ことはできても「活かす」ことはできないということ。つまり、書き起こすだけでは不十分です。せっかくの新しい知識や気づきは使わないと意味がありません。
いざというときの引き出しを増やしておくには、「活かす」という意識が大事。そこで、「誰かに伝える」ことがもう一つのポイントになります。口頭にしろ、レポートにまとめるにしろ、そこで聞いた内容を自分なりに咀嚼してみる。それが「活かす」ことにつながります。
(書き起こしたものを)口頭で会社の同僚などに伝えるもよし。レポートにまとめて、部内回覧するもよし。こうして得た知識を、自分も周りも活かすことができるというわけです。
先日、取り上げた「なぜ、ノウハウ本を実行できないのか?」という本にも、「新しい知識を活用するには、まずそれを人に伝えるのが一番」とあります。人に伝えることは、自分の記憶に長くとどめておく効果があります。
こうして書いてみて改めて思い出すのは、あの東日本大震災です。多くの人にとって忘れられないことであり、書き起こすまでもないかもしれない。それでも、「活かす」ためには、多くの人がそれぞれの立場で記録をしているし、マスコミでも同様です。
朝日新聞で4月から「てんでんこ」という特集が連載されています。三陸海岸を基点に「創造的復興」のあり方をレポートしているもの。忘れないだけでなく、活かそうとする企画です。