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広報パーソンのつぶやき

事業会社の広報担当者と広報コンサルティングの経験からコミュニケーション全般をメインに、ライフスタイル風なネタも。

実名報道に関して広報担当者が留意しておくべきこと

■日本人が犠牲になったダッカでのテロ事件と実名報道

 7月1日深夜にバングラデシュ・ダッカの襲撃テロが発生し、日本人7名の尊い命が断たれました。日本政府は翌2日の会見で、「家族の了解をいただいていない」として、氏名の公表を見送りました。

 

 それに同調する形で犠牲者の所属先の関係者も、「政府が言うなということは言えない」と記者会見で述べました。その一方で、各マスコミは独自に犠牲者の特定し、朝日新聞の検証記事によると、「3日までに主要紙はすべて、独自取材で7人全員の名前を報道」しました。

www.asahi.com

 

 政府が氏名の公表をしたのは、現地から遺体と遺族が戻った5日。9人の犠牲者が出たイタリアでは、2日深夜に「不確実な情報が流れないよう、外務省側が遺族に事前に伝えた上で公表した」といいます。

 

「被害者の名前をむやみに隠すな」

 企業に絡んだ人の生死にかかわる事件や事故はこれまでも多数起こっていますが、被害者の名前の取り扱いについてのマスコミの立場は、「実名報道が原則」ということにつきます。そこを理解しないと、無用な衝突につながります。

 

 「記者会見に一番大切なことを記者が教えます」(2010年)には、不祥事が発生した際の模擬記者会見の9つの事例が掲載されています。この中で、記者会見の要諦に一つとして、「被害者の名前をむやみに隠すな」とあります。

記者会見にいちばん大切なことを記者が教えます

 

 さらに、「実名を公表したうえで、報道を控えてほしいと要求することと、実名公表を拒否するのとでは、全く意味合いが違う」、「実名報道か匿名報道にするかは、報道側の判断に任せてほしい」と。

 

シミュレーショントレーニングで感じたこと

 筆者がかかわった工場事故のシミュレーショントレーニングで、記者役から「被害者の氏名、年齢、家族構成」に関する質問がありました。この時は、台本にあった内容をそのまま伝えることで、それ以上のことはありませんでした。

yhkhashimoto.hatenablog.com

 

 しかし、そのあとの振り返りで「『個人情報にあたるので、控えさせていただく』と答えてもいいものか?」という質問を受けました。「隠しているという印象を与えないためにも、実名を伝えるべき。ただ、家族などの事前了解などを得ておくべき」という主旨のことを答えた記憶があります。

 

 改めて考えると、死者が出るような「自社が引き起こした重大事故」の場合、事の重大性に鑑み、「開示せざるを得ない」と考えます。(今回のテロやプラント大手の日揮のような巻き込まれたケースとは違います。)

yhkhashimoto.hatenablog.com

 

 マスコミ出身者に意見を求めると、「警察(あるいは消防)に聞いてほしい」というのが最もマズい対応だと。また、前出の本にも、「個人情報保護法は報道目的への情報の開示は禁じていない」とも。

yhkhashimoto.hatenablog.com

 

 センシティブな問題なだけに、被害者家族への配慮が特に必要な問題です。他方で、「自社が引き起こした重大事故」であるにもかかわらず、実名公表を拒否することは、無用な軋轢をメディアとの間に生みかねない。広報担当者の立場としては、実名公表に理解と協力を得ることも必要だと感じます。

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