広報パーソンのつぶやき

事業会社の広報担当者と広報コンサルティングの経験からコミュニケーション全般をメインに、ライフスタイル風なネタも。全国通訳案内士(英語)

事件・事故発生でまずもってしなければいけないこと

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「すぐに手を打つ」ことの重要性 

 工場火災のような事故が発生した時に大事なのは、とにかく「すぐに手を打つ」ことだとされます。つまり、「対応の方針を何よりも早く決めなければならない」ということです。では、どんな手を打つべきなのでしょうか。

 

 実際の現場で、どのような時間軸で推移するのを見てみます。参照したのは、数年前に化学メーカーで起きた工場火災のケース。このケースでは15時間にわたり、工場内が燃え続け、死者1名を含む20名以上の負傷者が出ました。

 

 事故に関する調査委員会の報告書がホームページから閲覧できますが、深夜2時15分に爆発とともに火災が発生、その5分後に消防に通報を行い、対策本部が立ち上がったとあります。すぐ打つべき手とは、「消防への連絡」、そして「対策本部の立ち上げ」であることがわかります。

 

 その日の夕方、約15時間後の17時15分に消防本部が鎮圧を宣言します。(鎮火は翌日14時31分。ちなみに、鎮圧は炎が見えなくなった状態を、鎮火は消火活動の終了を指します。)

 

■ネットでの拡散

 事故発生直後、現場近くでは、爆音や振動が多くの近隣住民に感じられたことから、個人の撮影した動画や画像といった情報が、ネットを通じて瞬く間に拡散していきました。深夜にもかかわらず。

 

 発生から1時間ほどが経った、午前3時過ぎには、事件の第一報がマスコミのニュースサイトなどを通じて流れ始めます。消防に通報した時点で、記者の知るところとなるということです。まさに「サイレンがマスコミを連れてくる」状況です。

 

 こうしたネットでの拡散という事態を考えれば、会社としての何らかのステートメントをホームページ上にアップすることも必要だったのではないかと感じます。

 

 工場長による会見は朝7時から行われました。発生から5時間弱ということになります。火災発生が日付がかわったばかりの日曜日で、しかも深夜という時間帯だったという不運も重なったのでしょうが、本来ならもっと早く会見を開くべきだったでしょう。

 

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■模範的な事故対応で求められること

 今でも模範的とされる旭化成延岡市にある2002年の工場火災のケースでは、17時27分に爆発が起き、7分後に消防に第一報がもたらされます。最初の記者会見は、工場が燃え続ける中、20時過ぎに行われました。つまり、およそ3時間後。

 

 火災の鎮圧は翌日の午前2時24分(鎮火は14時37分)で、本社の社長もこの日の早朝に東京から飛行機で移動し、11時に会見に臨んでいます。幸い人的被害がなかったことも、報道が過熱しなかった理由の一つだと思いますが、何より会社側のスピード感を持った対応が語り継がれています。

 

 特に、鎮火、鎮圧を待たずに積極的に情報開示をおこなったことが大きかった。「近隣住民の不安を取り除くことを最優先する」という一貫した方針があったからこその対応です。

 

 会社の広報担当者も当時、「すべてオープンにする」ことの重要性を熱く語っていました。マスコミからも旭化成の対応を称賛する声を実際に聞いたことがあります。

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