トップが現場で、「聴く、話す、書く、読む」ことが不祥事撲滅の第一歩
■不祥事とトップの心がけ
昨年11月7日の日経電子版に「企業不祥事が起きる主な原因は?」という読者アンケートの結果に関する記事がありました。これによれば、不祥事が起きる原因のトップスリーは「経営トップの法令遵守意識の欠如」30%、「経営トップによる業績向上へのプレッシャー」(18%)、「不正を助長するような社内体質」(14%)でした。
「従業員の法令順守意識の欠如」が9%で5位ということを考えると、トップの「心がけ」が不祥事撲滅において、いかに重要であるかがわかります。上司の役割は、組織の目標を達成に向けてリーダーシップを発揮することと、部下のモチベーションを下げることなく、その能力を最大限に発揮できるようにすることです。
それが逆に作用してしまうと、組織はあっという間に崩壊の道をたどっていくのは、多くの事例が物語っています。不祥事まで行かなくても、納得がいかないような指示に部下が渋々従わざるをえなかったり、高圧的な上司にモノが言えなかったりする、といったことは多くの職場で内在している問題ではないでしょうか。
■「聴く、話す、書く、読む」でコミュニケーションを円滑化
8月24日の朝日新聞「経済気象台」に、「コミュニケーションで成長」と題した匿名寄稿記事が出ていました。中小企業の経営者だという「削」氏も、コミュニケーションに頭を悩ませてきたといいます。
そこで、実践しているのは「聴く、話す、書く、読む」。以下の通りです。
相手が何を言いたいのかをしっかり「聴く」
それはこういうことかと確認する意味で「話す」
互いの認識が合っているかを確かめるかを紙に「書く」
最後に相手に意見を押し付けていないか、その場の空気を「読む」
「ざっくばらんに話す場」にも気にかけ、「会議室ではなく、現場で提案者から説明を受け、コメントするやり方に改めた」と。こうした取り組みが奏功し、「社員の自発性が伸びてきた」そうです。
■「検証結果を共有する」ことが次の過ちを防ぐ
同じ日の朝日新聞の社説では、群馬大と三菱自動車の不祥事を例に、「検証結果を共有する」ことが次の過ちを防ぐと述べています。群馬大病院での医療ミスによる死亡事故も三菱自動車による燃費データの偽装も今年起こったことです。
どちらの組織にも「手術を中止させた方がよいと進言した者」や「燃費の測定方法が法令に違反しているという声」があったといいます。残念ながら、そうした意見は繁栄されず、結果的に取り返しのつかない事態になってしまいました。
そうならないように、「トップが現場で、聴く、話す、書く、読む」ようにすることが大事なのだと改めて感じます。