「良い会社に悪い広報なし。悪い会社に良い広報なし」なのか?
■「良い会社に悪い広報なし。悪い会社に良い広報なし」なのか?
新聞社の要職にある方が以前、「良い会社に悪い広報なし。悪い会社に良い広報なし」と力説していたのを覚えています。広報は、その会社のスポークスパーソンなわけですし、名門企業の優秀な広報パーソンを何人か知っているので、「確かにそうかも」と思うことが多いのは事実です。
平時の時なら、記者とのコミュニケーションを積極的に図る一方、社内人脈を広げることにも熱心で、誠実で裏表がなく、自社の業界のことをよく知っている。マスコミ人脈が広く、何かと頼られることも多い。そんな人が優秀な広報パーソンといえるのではないでしょうか。
その一方で、いくら優秀な広報パーソンでも、その力量だけではいかんともしがたいのが、クライシスが発生した時です。真の優秀な広報パーソンは、上記に加えて、こうしたクライシスの時に、冷静さを失わず、ステークホルダー側に立って、判断ができるかどうかだと思います。
■クライシス発生時に広報ができること
今から10年以上前にJR西日本の脱線事故が尼崎市で発生し、107人もの尊い命が犠牲になりました。このとき、JR西日本は事故発生から数時間後の会見で、線路に置石されたことが原因であることを示唆し、それを新聞各紙も報道しました。数日後にスピード超過が原因であることがわかるのですが、大惨事の原因をミスリードする結果となりました。
広報担当者は常に「本当にそうなのか」という目を持たなければなりません。多くの犠牲者を出した事故ならなおさらです。事故原因をミスリードするようなことはあってはならないことです。安易に事故原因を示唆するのではなく、原因がはっきりしないのであれば、「調査中」と答えればいいのです。たとえ記者からの厳しい追及にあっても、いいかげんな答えは大きなしっぺ返しが伴います。
あの3.11の時の東京電力のプレスリリースが今でも同社HPに掲載されています。あの日、福島第一原子力発電所の初報は夜7時20分でした。リード文は以下の通りです。
「原子力災害対策特別措置法第10条第1項の規程に基づく通報以後の状況について
ご報告いたします。以下のとおり、移動式モニタリングポストで発電所周辺の放射能の状況を確認したところ、通常と同じ値であり、現時点で周辺環境への影響はないと思われます。」とあります。
混乱した状況の中でやむを得ない面もありますが、3日後には水素爆発が起こり、大勢の人たちが避難したことを考えると、情報発信の難しさを改めて考えさせられます。