スマホによる動画撮影のほかにすべきことはなかったのか
■デザイン関係の野外イベントの火災事故で感じたこと
先月の上旬、都内の神宮外苑で開かれたデザイン関係の野外イベントで、木製のジャングルジムの形をした造作物が何らかの原因で燃えて、5歳の尊い命が奪われてしまいました。先日、お別れの回が開かれ、事故現場に一緒にいて男の子を助け出そうとしたお父さんのコメントが新聞に載っていました。
外苑火災:死亡の5歳男児お別れ会 500人冥福祈る - 毎日新聞
「ただただ深い暗闇の中にいる気持ちです」と結ばれたその短いコメントに愛息を失った父親の悲痛な気持ちが現れています。この先、息子の成長を目を細めながら、楽しみにしていたはずだけに、子を持つ親なら、あるいはそうでなくても、その無念な気持ちは痛いほどわかります。
本当にいたたまれない事故でした。日曜日の夕方の事故でしたが、その日のテレビでは視聴者からの提供とされる、ジャングルジムが燃え盛る様子の映像が流されていました。映像を見ると、スマホを使ってその様子を撮影する人が他にもいました。動画サイトにも事故映像がアップされていました。
■正視に堪えない動画を撮り続ける人
その動画の中には正視に堪えないものもあるといいます。周りに消火設備がなかったとか、演出の一環と思った人もいたとか、理由もあるでしょうが、懸命に消火や救助をしようとする人がいる一方で、動画を撮り続ける人はどういう神経なのかと憤ります。
「そんなことをする暇があったら」と思うのはその場にいないから言えるのでしょうか。筆者はそうは思いません。人が何をしようが自由ですが、していいこととそうでないことの区別がつかない人がいることを、この事故で改めて思い知らされました。
騒然とする状況の中で、事故に巻き込まれた人がいたことは近くにいるならわかるはずです。常識的な感覚の持ち主なら、とてもスマホを向けるようなことはできないはずです。
警察の捜査が継続中ですが、火災の原因は投光器の白熱電球の熱だといわれています。LEDや蛍光灯の普及で、白熱電球が熱を帯びることを知らなかったとしても、それで済まされる問題ではもちろんありません。
事故を起こした人や関係者は厳正に処罰されてしかるべきですが、火事を面白がってスマホで撮影し、これをSNSにアップするような人たちがいたことをとても残念に感じます。