「常日頃から意識的に『広報資源』を蓄えておく」
■「常日頃から意識的に『広報資源』を蓄えておく」
広報担当者に長く読み継がれている小説に「広報室沈黙す」があります。この作品の著者である高杉良氏のインタビューを最近読みました。「企業広報完全マニュアル」(2014年)というムック本の巻頭にその記事があります。
この中で、参考になる記述がいくつかありました。例えば、「広報に何が求められているのでしょうか」との問いに、「常日頃から意識的に『広報資源』を蓄えておく」ことだと。さらに、「広報は細部まではともかく、自分の会社の全体像を常につかんでおかなければならない」と述べています。
確かにその通りです。厳しくいえば、自社の全体像を理解していないようでは広報パーソンとしては失格です。とはいえ、そうなりたくても、なりたてのころはそうもいきません。そこで高杉氏は「『社内報』の持つ意味が重要だ」といいます。
「充実した内容の社内報をつくるには、各部署に社内人脈を張り巡らせておく必要もある。それが取材対応に役立つはず」と。さらにいえば、業界他社や世の中の動きにもアンテナを張っておくことも大事。なので社内からマスコミや他社に人脈を少しずつ広げていくのがいいでしょう。
大きな会社になると、社内報制作を外注したり、ハウスエージェンシーに任せたりすることも多いと思います。実際、筆者のいた会社でもそうでした。従って社内報制作に関わることはありませんでしたが、内容はつぶさに読むようにしていました。直接、取材のヒントにつながることはありませんでしたが、全国(あるいは海外)の拠点で働く社員の仕事ぶりを知るいい機会でした。
社内報は当然社員向けですが、以前いた会社では記者にも配布するようにしていました。ただでさえ多くのリリースに埋もれて取材を行っているのですから、読んでもらうことはなかなかかなわないかもしれませんが。
最近ではペーパーレスにする会社もあると聞きますが、社内報は「(家に持ち帰って)社員の家族にも読んでもらうべきもの」と考えれば、やはり紙のままの方がベターです。
■リスク発生時の広報対応
批判的な取材に対しての対応について、高杉氏は「高い説明能力が求められる」としたうえで、次のように述べています。「『そのことについては、そういう面もある。しかし、こういう事実もある』と。この”しかし”というのが大事。(中略)例えば、8割悪くても、2割は悪くない面、良い面がある。そこを説得できるか」。
記者と無用な対立は、「説明能力の低さ」によって引き起こされることが少なくありません。繰り返される謝罪会見での失態は、こうした基本動作に対する備えが不十分なことで起こります。