広報パーソンのつぶやき

事業会社の広報担当者と広報コンサルティングの経験からコミュニケーション全般をメインに、ライフスタイル風なネタも。全国通訳案内士(英語)

トップ人事の記者会見申し込みタイトル私案

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■トップ人事の発表

 大企業のトップ交代のニュースが続いています。

 

 トップ人事と企業の合併や買収は新聞記者にとって、最もスクープしがいのあるネタとされています。年明けから3月ごろまでは特にトップ交代の発表が行われやすい時期ということで、多くの記者が他紙を出し抜こうと、日夜取材に励んでいるはずです。

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 多少早くわかったからといって日常生活には、どうということはないのですが、記者たちにとってはスクープした事実はずっとついてまわります。勲章に違いありません。同じ新聞社の他の記者を「彼(あるいは彼女)は○○(会社名)の社長人事を抜いた」と紹介するような話を何度か聞いたことがあります。

 

 記者が血眼になるネタだけに、我々広報担当者側は徹底した情報管理が求められます。ある会社では広報部内でも限られた人間しか知らされず、発表当日になって初めてその事実を知る部員もいると聞きます。それぐらい発表に際して細心の注意が必要です。もちろん記者クラブを通じて発表の申し込みをする場合も同様です。

 

■社長交代会見が「重要な経営課題」には違いないが。。

 社長人事を資料配布だけで済ますのではなく、併せて記者会見を実施することがありますが、その場合、記者クラブの幹事社に「○○の件で本日○時から会見を行います」ということを事前に申し込まなければなりません。緊急記者会見の一種ですが、開始時間の遅くとも2時間前までにこうした申し込む必要があります。

 

 そこで広報担当者が考えなければならないのは、「発表のタイトル」です。細心の注意が必要な発表内容だけに「社長交代について」というタイトルがふさわしくないのは想像がつくと思います。そのものズバリなので、発表が行われる前に「新聞がだめならネットに先に記事を書いてしまえ」とばかりにニュースが先に流れてしまわないとも限りません。しかもそれが正確であるならまだしも、違う人だとしたら大変です。

 

 昨年2月に大手航空会社が「重要な経営課題について社長出席で会見する」と記者クラブに発表申し込みがあり、何事かと様々な憶測が飛び交ったことがありました。結果として、その内容は社長交代を発表したにすぎませんでしたが、ネガティブインパクトがもたらされるのではないかと、株の売り注文も相次ぎ、株価が急落したとされます。

 

 大手企業の場合、発表の申し込みがそのまま一行ニュースとして通信社から配信されることがよくあります。「重要な経営課題について社長出席で会見する」がトップ交代だとはいくらベテラン記者でも想像つかなかったのではないでしょうか。記者をかく乱する意図はさすがになかったでしょうが、誤解を招く表現には違いありません。

 

 この日に行われた社長交代の会見でも、「経営の案件の中で重要な決定には違いないんですけれども、そういう意味ではもう少し表現がなかったかなというのは正直反省をしております」と弁明せざるを得ませんでした。

ANA、“重要な経営課題”報道で株価乱高下 篠辺社長「申し訳なかった」 - ログミー

 

■トップ人事の発表タイトル私案

 社長交代の発表では、「代表取締役の異動について社長出席で会見を行う」というタイトルで申し込むことがまず考えられます。但し、この場合、暗に社長交代だと言っているようなものです。数年に一度のトップ交代の会見ですから、広報担当者としては一人でも多くの記者を集めようとするのは当然です。なので多少のヒントを与えて、会見の重要性を記者に判断してもらうように誘導します。ただ、「トップ交代を悟られる」懸念がある以上、会見前に速報が流れてしまうことがありえます。

 

 それを避ける方法はないのかと考えてみました。例えば「重要な人事について代表取締役が出席して会見を行う」というタイトルで発表を申し込んだらどうでしょうか。

 

 記者からは真っ先に「社長人事ですか?社長は出席しますか?」と確認の電話が広報にかかってくるはずですが、イエスともノーとも言わずに「申し訳ありませんが、会見時間までお待ちいただきたい」とすれば記者をミスリードすることもないと思うのですが。

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