広報パーソンのつぶやき

事業会社の広報担当者と広報コンサルティングの経験からコミュニケーション全般をメインに、ライフスタイル風なネタも。全国通訳案内士(英語)

昨年11月の「ゴーン逮捕」の会見を考える

f:id:yhkhashimoto:20181204060458j:plain

小樽の船見坂

■居酒屋のテレビで知った「ゴーン逮捕」
 日産自動車が4月8日、東京都内で臨時株主総会を開き、カルロス・ゴーン前会長(65)を取締役から解任しました。事の発端は、去年の11月19日にゴーン前会長が金融商品取引法違反の容疑で逮捕されたことに始まります。出張先で夕方5時に友人と駅の改札で待ち合わせてそこから5分くらいにある居酒屋で飲んでいましたが、テレビのニュース速報のテロップで(6時頃だったと記憶)その事実を初めて知りました。混んでいた店内でしたが、客の間からもどよめきが上がっていました。

 テロップには「金融商品取引法違反」としか書かれていなかったので、それ以上のことはわかりませんでしたが、「インサイダー取引違反かな?」、「でも仮にそうならそう報じるんじゃないの?」などとテレビを見ながら友人と話していました。

mag.sendenkaigi.com


朝日新聞デジタル版が特報
 その後に見聞きしたところによると、「東京地検特捜部が19日夕、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑でゴーン氏を任意同行した」と。朝日新聞のデジタル版が最も早く報じたようです。次の日の朝刊や当日の夕刊ではなく、デジタル版によるスクープが夕方に流れたというわけです。

www.asahi.com


 ゴーン会長はこの日、会社の飛行機で羽田空港に到着したタイミングを機に、東京地検の捜査は一気に動き出したとされていますが、朝日新聞デジタル版にはその飛行機の映像が残されており、水面下の取材が相当進んでいたことが伺えます。

 日産自動車は、「当社代表取締役会長らによる重大な不正行為について」と題するリリースを午後7時に開示し、午後10時か横浜市内の本社で西川廣人社長兼CEOが会見を行いました。午後9時過ぎにはすでに多くのマスコミが本社に集まっているとの記事があることから、まずリリースの開示を行い、そのタイミングに会見の開始時間についても告知したことが想像できます。

 朝日新聞デジタル版が報じたタイミングから記者会見終了までの一連の流れは、とてもスムーズだったように感じられます。日産自動車サイドにとって朝日が報じたことは「想定外」だったかもしれませんが、水面下では掲載タイミングとそのあとの動きで駆け引きがあったようです。

yhkhashimoto.hatenablog.com

 
■抜かれた会見は荒れ模様になりやすい
 特定のマスコミ一社だけが報じ、それから間もないタイミングで記者会見を行う場合、抜かれた他紙はおもしろいはずがなく、「会見が荒れやすい」ということが言われます。しかし、この会見の一問一答を読んでも荒れている様子は伺えません。西川社長も会見慣れしているせいかソツのない受け答えのように感じられます。

 内容の重大性に鑑み、会社側をネチネチ責めるよりも、「200名を超える記者が来ている会見でメディアも国内外から来ているから行儀よくしておこう。締め切り時間も考慮しなきゃいけないし」といった意図が働いたのかもしれません。その点を含めても会社側の仕切りがうまくいったと感じる広報対応でした。

yhkhashimoto.hatenablog.com

f:id:yhkhashimoto:20151028152550p:plain