広報パーソンのつぶやき

事業会社の広報担当者と広報コンサルティングの経験からコミュニケーション全般をメインに、ライフスタイル風なネタも。全国通訳案内士(英語)

特ダネと飛ばしの違い

 

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 同じ日にライバル企業のそれぞれのニュースが別々の新聞社に特ダネとして掲載されるということが最近ありました。どちらも携帯キャリアの新たな事業展開に関するスクープです。日本経済新聞と読売新聞に10月20日に掲載されました。

 

 日経はドコモが日本生命と業務提携を行い、保険商品のショップ販売を始めるという記事で1面に、読売はKDDIが一般家庭向けの電力小売りに参入するという記事で経済面の肩に掲載されました。

 

 ドコモのニュースは共同通信が後追いし、毎日新聞などがその配信記事を同日夕刊で掲載しました。翌21日の朝刊では読売、朝日新聞産経新聞が記事にしました。一方、KDDIのほうは日経が夕刊で後追い記事を書きました。

 

 KDDIは20日にリリースを出しました。ドコモは20日ではなく21日に発表し、すでに報じていた日経や産経が再び記事にしました。各社のリリースは以下の通りです。

news.kddi.com

www.nttdocomo.co.jp

 

 記事の露出状況を表にまとめると以下のようになります。(◎は特ダネ、〇は当該企業だけの記事、△は当該企業と競合企業のまとめ記事。産経新聞は夕刊がない。)

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 これらの一連の記事を読み比べて、ライバル紙を出し抜くことでしのぎを削っていることが改めて見て取れます。ドコモのニュースは、日経1面の記事が呼び水になったことや発表が1日遅れたことで、広報担当者にとっては「一粒で二度おいしい」結果になりました。一方のKDDIは、広報担当者の立場から見ると、朝日に掲載がなかったことや日経での扱いが小さかったことが課題として残りました。

 

 経済報道に強い日経はスクープにも強いといえます。以前、日経のとある方が「我々としては少しでも早く報道し、そして深く真相に肉薄したいと考えているので、『待てない』ことを理解していただきたい」、「重要な経済ニュースはどこよりも先に書かなければならないというプレッシャーに常にさらされている」と言っていましたが、おそらく本音だと思います。

 

 そうしたプレッシャーのせいか、特ダネではない飛ばし記事が時折見られます。裏付けを十分に取らないまま、記者の憶測も交えて書かれる記事です。他社を出し抜こう、少しでも早く報道したいという思いから、「待たずに」記事にしてしまうケースです。

 

 どのニュースにも情報源は必ずあるので、「その瞬間は事実」なのでしょう。しかし、思惑通りに物事が運ばないのは世の習いです。例えば統合関連の特ダネは日経の独壇場ですが、「川崎重工三井造船」(2013年)、「日立製作所三菱重工」(2011年)、「キリンとサントリー」(2009年)、「三井住友銀行大和証券」(2005年)など(交渉はしていたのでしょうが)実現に至らなかったケースも少なくありません。

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