ネガティブな声をコントロールするためにスタートしたプロジェクトが転換した訳
■SNSを活用して賛同者を増やす方針に転換
2005年の夏に米国で発生し、多くの犠牲者・被害者が出た大型ハリケーン・カトリーナの際、批判の矛先が赤十字社に向かったといいます。「災害がすぐそこで起こっているのに、有効な手立てを取らなかった」と。
SNSに書き込まれた多くの誹謗中傷に、赤十字社の幹部が危機感を抱きました。そこで、SNS担当のマネージャーが採用されることに。分析を行ったマネージャーはあることに気づきます。赤十字社に対する苦情や不満は確かにあるものの、「大多数は赤十字社に対して好意的」であるという事実。
つまり、「災害時には赤十字社を手助けしたい」という人の方がはるかに多い。そこで「ひどいことを書くことを食い止める」という当初のミッションから方針を転換することを決意します。
SNSに不慣れな経営陣の心配は尽きません。それでも、マネージャーが粘り強く説明し、段階的に赤十字社をSNSの「新しい世界に導いて」いきました。700以上の地方支部には、ルールや手順を指示し、マニュアルも作成しました。
■SNSの活用がもたらしたもの
「何をすべきで何をすべきでないか」を適切に見極め、手順をきめておいたからこそ、「経営幹部は心やすらかに扉を開くことができた」と書かれています。
これは、「フェイスブック時代のオープン企業戦略」(2011年)の序論から引いたエピソードです。本によれば、SNSの活用で最も意義深かったことは、「赤十字社の社員だけでなく、緊急時の待機要員から献血や寄付をしたことがあるというだけの人まで含めて、広いコミュニティによびかけられるようになったこと」と。
ネガティブな声をコントロールするために、スタートしたプロジェクトだったことは先に述べました。マネージャー自身の懐から(後で請求したそうですが)ドメイン名を購入し、アカウントを立ち上げたそうです。「成果が出るまで承認は得られないと考えたから」との理由で。
■SNSを使わない”三大理由”とベストプラクティス
いまだにSNSの活用に二の足を踏んでいる企業が少なくありません。その”三大理由”は、「時間の無駄」、「一文の得にもならない」、「炎上リスク」ではないでしょうか。特にB2B企業にはその傾向が強い。
世界有数の化学メーカーBASFは、B2Bでありながら、SNSをコミュニケーションにうまく活用している企業として知られています。"News & Media Center"は、以下のように、SNSのハブ機能も果たしています。
”三大理由”がSNSの活用の妨げになるという理屈はよくわかります。ただ、手をこまねいていいとも思いません。できない理由を考える前に、できる方法を考えるほうがはるかに生産的です。米赤十字社にしろ、BASFにしろ、試行錯誤の末に、SNSを活用して賛同者を増やす方針に転換し、成功を収めています。
アラビアのことわざに以下のようなものがあります。
「何かをしたい者は手段を見つけ、 何もしたくない者は言い訳を見つける。」