好奇心が人生を豊かにする(前編)
■一万円札の肖像画
一万円札の肖像に描かれている偉人といえば、誰もが知る福沢諭吉です。その福沢諭吉が書いた代表的な著作といえば「学問のすゝめ」。初編は1872年(明治5年)に刊行され、1876年に完成しました。
ウィキペディアによれば、「最終的には300万部以上売れたとされ、当時の日本の人口が3000万人程であったから実に10人に1人は買った計算になる」といいます。現在に置き換えると、「10ミリオンセラー」ということになります。
福沢諭吉はこの本で、国民に学ぶことの重要性を説きます。個人個人が近代民主主義国家の一員としての自覚と自立をその本に込めています。「個人が自立しなければ、国にも自立しない」と。そう考えると1万円札の見方も少し変わるかもしれません。
咸臨丸で勝海舟(仲は生涯悪かったようですが)とともに渡米したり、江戸幕府の幕臣として渡欧したり、と海外の見聞も広かったようです。慶応義塾大学を創設したことはあまりにも有名ですが、そのバックアップも受けて時事新報(産経新聞社の源流)という日刊紙も創刊しました。居合の達人でもあったとか。
■好奇心がパワーの源
こうした抜きんでた人物の共通点、つまりパワーの源は「好奇心」だと「頭のいい人が『脳のため』に毎日していること」(2010年)にあります。アインシュタインも自分の強みを尋ねられたとき、「好奇心だ」と答えたそうです。
日常に存在することはアインシュタインにすれば、不思議なことだらけ。それが彼の行動のモチベーションだったわけです。この本は好奇心がもたらす効果を実感している一人として、印象的な内容が他にも多く含まれています。
例えば、「心をオープンにし、好奇心を持つことで、毎日の暮らしのもっともありきたりな一面さえ、スペシャルなことに“改良”でき、皆が不安で立ち止まっているときに、自分は明るく一歩も二歩も先に行くことができる」。
もう一つ引きます。「好奇心は脳に巡らされた配線の一つ。自らを進化させるエンジンの役割を果たし、人が探索し、発見し、成長することを促す」。
■適度な好奇心を持とう
好奇心は誰にでも備わっているものですが、その強さや関心の方向は千差万別。「好奇心がとても強い人」が持っている共通の特徴というのも紹介されています。
- 興味、疑問に思う気持ちなどを激しく感じる
- 1日に何度も、常に新しいものを探している
- 不確実な状況にずっと飽きることがない
- 世界は無限の「広がり」があり、しかも「深い」と感じている
好奇心が”過度である”必要を筆者は感じていません。ただ、適度な好奇心は心を豊かにしてくれるものだとこれまでの経験上から確信できます。