広報パーソンのつぶやき

事業会社の広報担当者と広報コンサルティングの経験からコミュニケーション全般をメインに、ライフスタイル風なネタも。全国通訳案内士(英語)

「鳴かず飛ばず」の本来の意味

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■「鳴かず飛ばず」の本来の意味

 下積み時代が長く続いて、思うような活躍ができないでいることを、「鳴かず飛ばず」といいます。本来は、「『三年』飛ばず鳴かず」といい、実力のあるものが、活躍の機会に備えて、じっと待っているさまを指し、普段我々が使っている意味とは違うことを知りました。中国の故事が由来です。

 

 中国の王様(楚王)が即位して三年の間、国を治めることに関心を全く示さず、昼夜を問わず、酒や女にふけっていました。国の行く末を憂いた官人(伍挙)が勇気をもって国王に対し、謎かけをして、政務に関心を向けさせようとします。

官人:「丘の上に一羽の鳥がおります。 三年の間、飛びもしなければ鳴きもしません。どんな鳥でしょう?」

王様:「三年も飛ばないのだ。飛べば天まで届こう。三年も鳴かぬのだ。鳴けば人々を驚かすだろう。」

 

 王様はそのように言い放ちますが、その後も放蕩を続けます。そこで別の官人(蘇従)が出向き、その振る舞いを再度正そうとします。王様を諫めることで死罪になることが知りながら決死の覚悟で。そこでようやく王様は満を持して、二人の優秀な官人とともに国造りに精を出すことになったのだそうです。(参考:「故事ことわざ辞典」)

 

 つまり、「あいつはずっと鳴かず飛ばずだ」と人様から四の五の言われるものではなく、自らの信念に基づきあえて「鳴かず飛ばずにいる」のだと。

 

■キャリアを三分割に分けて考える

 以前、「キャリアを三分割に分けて考えよう」という主旨のことを聞き、今でも印象に残っています。三分割の最初のパートは、ひたすらいろんなことを「吸収する期間」です。勉強にしろ、仕事にしろ、この間は見聞を広めることに務めます。

 

 もちろん、勉強や仕事ばかりじゃ息が詰まります。時には旅に出たり、はたまた遊びほうけたり。まさに、「鳴かず飛ばず」の期間と言い換えることができるのではないでしょうか

 

 二つ目のパートは、それまでに吸収したものを踏まえた、「方向性を定める期間」です。中国の王様のように、3年経っていきなり「鳴いたり飛んだり」するのではなく、どこに向かって「鳴いたり飛んだり」するのかを決める期間がここにあたります。

 

 そして、最後の三つ目が、定めた方向性を「全うする期間」です。

 

 人によっては、20代、30代、40代以降をそれぞれの期間として位置付けることもできるでしょうが、その期間は均等である必要もありません。あくまで一人一人の気の持ちようなので、自分がこうだと思えばそれでいいと筆者は解釈しています。

 

キャリアを一周して再び「鳴かず飛ばず」に戻る

 最近新聞で読んだ人生相談を興味深く読みました。「長く務めた教員を退職した。このまま人生を終えていいのかと自問自答している。そんな中、パートで働き始めた保育園の仕事に興味を覚え、保育士の資格試験を取ろうかと。でも、年齢を考えると何を今さらとも思うし」という主旨のものです。

www.asahi.com

 

 アドバイスにあたった識者は「迷いは無用。教員経験を保育士という新世界で活用できるなら、それが与えられた天職ではないか」と後押しします。キャリアを一周して再び「鳴かず飛ばず」に戻ることがあっていいのだと、教わった気がします。

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