後ろ向きの内容を進んで説明する意義
■決算発表の延期はネガティブな要因がつきもの
2016年3月期決算の発表が相次いでいます。例年、ゴールデンウィーク明けに発表件数のピークを迎えますが、GW前に済ませてしまう会社も多い。東証の適時開示情報サービスを見ると、(決算以外の発表もあるでしょうが、)4月28日には1000件を超えるリリースが発表されています。
そんな中、その4月28日に決算発表を予定していたホンダが、その発表を急きょ取りやめ、5月13日に延期することを発表しました。同社の21日付のリリースによると、「2016 年3月期の業績値および 2017 年3月期の業績予想については、一部数値の確定に若干の時間を要することとなったため」と。
決算発表の延期というと、ネガティブな要因がつきものです。昨年、東芝も5月8日に予定していた決算発表を行うことができませんでした。不適切な会計処理の問題が明るみになったためですが、結局発表を行ったのは9月7日。4か月も待たなければなりませんでした。
さすがに東芝のような事態には至らないでしょうが、ホンダの国内唯一の二輪車の製造拠点が地震の被害のあった熊本にあることから、業績予想への影響を懸念する報道もあります。
■後ろ向きの内容を進んで説明する意義
4月26日に都内で決算説明会を行った日本電産の永守重信社長が、純利益が3期連続で過去最高益を更新したことよりも、苦戦するスマホ用触覚デバイスについて説明の時間を割いたという記事が日経産業新聞の記事にありました。「後ろ向きの内容を市場関係者に真っ先に語り出したことに評価する声があった」と。
同社のHPには「触覚デバイスは力・振動・動き・熱・静電気などの触感によってユーザーに皮膚感覚フィードバックを与える技術」とあります。タッチパネルにこのデバイスを使えば、「押した」という感覚が得られやすい。
アップルが昨秋に発売した「iPhone6s」にも搭載されているそうです。同社の次期目玉と位置付けていた戦略商品が当初見込んでいたほどの伸びを示さなかったため、関連設備の減損損失を前期の決算に計上したと。
カリスマ性を持つ、稀代の名物経営者だからできる経営判断であり、説明の工夫ですが、日本を代表する大企業が決算発表にもたつくのと対照的だけに、「後ろ向きの内容を進んで説明する意義」について考えさせられます。