広報パーソンのつぶやき

事業会社の広報担当者と広報コンサルティングの経験からコミュニケーション全般をメインに、ライフスタイル風なネタも。全国通訳案内士(英語)

米国ではほとんどない(公開の)謝罪会見

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■近年の謝罪会見
 半年ほど前に「業種を問わない近年の謝罪会見」というコラムを別のところで書きました。この中で、「企業」と「不祥事」が含まれる新聞記事が2013年から2016年まで右肩上がりで増えていると。(ちなみに2013年432件、2014年485件、2015年554件、2016年621件。全国紙5紙が対象)

 今回、2017年の件数を改めて調べると688件で2013年に比べて1.6倍増えています。また、「謝罪」と「会見」を記事に含む件数は2593件、これに「社長」というキーワードを追加すると381件でした。まさに「業種を問わない謝罪会見」が毎日のように行われている計算になります。

yhkhashimoto.hatenablog.com


■米国ではほとんどない(公開の)謝罪会見
 日本では記者会見を開いて企業のトップなどが謝罪をするのが一般的ですが、米国では記者会見を開いて公開謝罪をすることはまれなのではないかと思います。3月に膨大な個人情報の漏えいが発覚したFacebookの場合、同社CEOであるマーク・ザッカーバーグは「自身のフェイスブックとCNNへの出演を通じて初めて公開謝罪をした」と伝えられています。

 3月17日の米英の有力紙の報道がきっかけで問題が発覚しましたが、「公開謝罪」をしたのは3月21日でした。当初5000万人とされた個人情報の流出は、4月に入って最大8700万人に上った可能性があると発表しました。その後、10日と11日に複数の公聴会で証言を行いましたが、これまでのところ謝罪を伴う記者会見を開いた形跡はありません。(その後、電話会見はしたと日経の報道にありました。)

www.nikkei.com


■米航空会社の乗客引きずり下ろし
 ちょうど1年前に米ユナイテッド航空の職員が乗客を強引に引きずりおろしたという前代未聞の出来事がありました。乗客はこの時に鼻の骨を折るなどのけがを負いました。同社のCEOは、声明(プレスリリースのようなもの)の中で乗客に謝罪しましたが、会見は行っていません。

 それからほどなくして会社側とけがをした乗客との間で和解が成立しましたが、「金額は公表しない」ことが和解条件の一部だったといいます。おそらく会社側は高い代償を払ったのだと思います。

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 日本では法的責任もさることながら道義的責任が取ることが重視されています。一方、欧米では法的責任と道義的責任ははっきりと区別されます。ユナイテッド航空の場合、道義的な謝罪を会見ではなく声明を通して行い、法的責任は弁護士を介した和解金で決着しました。

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