消費者より弁護士を重視する企業姿勢が破たんを招いた?
■消費者より弁護士を重視する企業姿勢
先日、会合で初めてお会いした大手自動車メーカーのOBは、エアバッグの欠陥問題により経営破たんしたタカタについて、「(タカタは)弁護士の言うことを聞きすぎる一方で、ユーザーの言うことを聞かなかった」と評し、「今の時代、弁護士の言うことも消費者の言うことも同じように重視しなければならない」と述べていました。
製造業には品質問題がつきものですが、このOBの会社のトップは常々、「弁護士の言うことはほどほどに聞いて、ユーザーの言うことに真摯に耳を傾けるべき」だと言っていたそうです。トップの姿勢が品質問題への対処に深く影響することがこの言葉でよくわかります。
■説明責任を最後まで果たさなかった社長
タカタは6月26日に東京地裁に民事再生法の適用を申請しました。日本の製造業戦後最大となる負債総額一兆円にも上る巨額の経営破たんとなってしまいました。この日に同社の高田重久会長兼社長が記者会見を行いましたが、マスコミの前に姿を現したのはこれでわずか二度目。その前は2015年11月と1年以上前です。何かと問題の多い企業と思われていたにもかかわらず。
そのことを記者から問いただされた高田社長は、「いろいろな方から『再建プロセスに私見を述べるのは適切ではない』と言われていた。(説明を控えてきたのは)個人的に申し訳なく思っている」(2017年6月27日付け東京新聞)と釈明しましたが、上場企業として説明責任を果たしたとは全く言えません。
エアバッグの欠陥が指摘され始めたのは、2007年ごろから。09年には米国とマレーシアで10数人が亡くなりました。対応の遅れに業を煮やした米運輸省は2015年に「欠陥を認めず、不完全で不正確な情報を発信して、何百万人の米国民を危険にさらした」と糾弾したし、同じころに最大顧客のホンダも、タカタの対応の姿勢を厳しく非難しました。
■ノイズを出してでも・・・
この間、同社も再建に向けた諸施策を打ってきたはずですが、日経ビジネスでは「タカタ会長、最後まで死者への謝罪はなし 民事再生法の申請で会見も、変わらぬ『消費者不在』」と厳しく断罪しています。「消費者軽視ではないか」との記者からの追及に「(弁護士らによる)外部専門家委員会に任せ、ノイズは出すなと言われてきた。私が唯一言ってきたのは(完成車メーカーに対する部品の)安定供給を続けたいというお願いの行脚だけだ」と説明していますが。。。
社長なのだからノイズを出してでも、消費者に対する真摯な姿勢を示すべきだったのではないかと思うのは私だけではないと思います。