決算記事もメディアトレーニングも人工知能(AI)に置き換わる?
■AI元年と広報業務
去年あたりからAI(人口知能)の話題がニュースで登場する機会が増えました。最近の毎日新聞に、今月の末に行われる「東京マラソンの警備にAIでコース上の危険を察知して伝える仕組みが世界で初めて試験的に活用される」という記事がありましたし、碁や将棋の対局でAIがプロを相手に互角の勝負をするというような記事はもはや珍しくもありません。
AIの仕組みをまったく理解しない筆者などは、「AIによってなんでもできてしまう」という脅威と、「AIに仕事を取って代わられる」という危機感を抱きますが、それもあながち間違っていないようです。
というのも筆者が身を置く、広報・危機管理の関連業務においても”AIの浸食”が始まろうとしている記事を最近二つ見かけたからです。一つは、日本経済新聞社が1月25日に「企業決算の要点を完全自動配信するサービスを開始した」という記事です。
記事によれば、決算短信を公表してわずか数分でその内容を”AI記者”がまとめ、記事の体裁にしてニュースとして電子版に掲載されるそうです。いくら速報で勝負している通信社でもリリースを受け取ってから2、3分でニュースを配信することはできません。
■AIがメディアトレーニング?
もう一つは「『もっとゆっくり』効果的な謝罪、AIが指南」という記事です。
PR会社と東京大学が共同で、「会見の音声データを分析し、人々が受ける印象をとらえ、改善点を指南する」といい、「ノートパソコンにAIを組み込めば、場所を選ばず評価や採点ができる。会見の前日に出張先で社内で練習する場合にも利用できる」のだそうです。
スポークスパーソンの立場に立てば、人間ではなくAIに指南されるのは「微妙」という気がしなくもありません。しかし、メディアトレーニングのサービスを提供するコンサルタントの力量や経験によって、指南の内容が変わってくることを考えれば、サービスの均質化を図るには一定の効果がありそうです。
ソフトバンクの孫正義社長が、「コンピューターが人間の知的能力を超える『Singularity(シンギュラリティー)』の時代が必ず来る」と度々力説していますが、他ならぬ孫氏の言葉だけに説得力があります。時期については、「30年後」の2045年ごろとと予言していますが、果たしてどうなるのでしょうか。
千葉県富津市の「ふるさと納税」の記事から今年はやってみようかと思案中
1月19日の朝日新聞の地方面(千葉首都圏版」に「ふるさと納税急増 当初目標の4倍」という記事が出ていました。千葉県の房総半島の東側にある富津市にスポットをあてた記事です。
すっかり市民権を得た感のあるふるさと納税ですが、これまで利用したことがありませんでした。記事によれば、当初の目標の5千万円に対し、2億円以上集まったといいます。増加の要因は、ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」で利用しやすくなったほか、返礼品が31品から125品になったことを挙げています。
なるほど返礼品のメニューを紹介しているサイトを見ると、想像以上にバラエティに富んだ品ぞろえです。新鮮な驚きを感じるとともに、「利用してみようかな」と思わせるものです。メリットを感じている人が多いということでしょう。
富津市は鋸山という景勝地があります。都心からも比較的近く、この辺りは、実は温泉の宝庫でもあります。
■故郷に思いをはせる納税制度
制度は知っていましたが、多くのサラリーマンにとって縁が薄い確定申告をしないと、住民税の控除を受けられないという面倒な面があると「生半可な知識」で敬遠していました。しかし、調べていくと「ふるさと納税ワンストップ特例」の申請で住民税の控除が受けられることがわかりました。(つまり、後に支払う住民税の負担が軽減されるということ。)
12月には駆け込みでふるさと納税を利用する人が多いことは冒頭で紹介した記事にもあります。でも年が明けた今のうちから計画的に行おうかと思い始めています。そうすれば、返礼品が届くタイミングも分散されるし、落ち着いて応援したい地方自治体を幅広く全国から選ぶこともできます。
筆者は北国育ちだから、北海道や東北の自治体を応援したいとか、被災地を応援したいとか。逆に、九州や四国などなじみのない場所にこの制度をきっかけに思いをはせることもできます。夢が広がるいい制度だと思います。何より日ごろ無関心な税金について考えることもできるし。
未経験の納税制度ですが、今年はやってみようと思います。
PR会社はメディアとのネットワークを持っているのか
■PR会社に期待すること
広報・IRの担当者やPR会社の社員がよく読んでいる雑誌の一つとして「広報会議」という月刊誌があります。2月号で107社へのアンケート調査による「企業の広報・PR活動」の結果が出ていました。
アンケートに答えた会社のほぼ半数の51%が「PR会社に業務委託中」と答えており、一定の存在感がPR会社にあることがわかります。また、「PR会社に期待すること」のベストスリーは、「メディアとのネットワーク」、「最終的な成果」、「企画提案力」とありました。
新聞、雑誌そしてテレビでの露出という最終成果を求めたり、アウトプットを出すための仕掛けや企画を重視したりする以上に「マスコミ人脈」に期待していることが、この結果からわかります。
言うまでもありませんが、人脈は一朝一夕に出来るものではありません。それなりの年月をかけて少しずつ醸成していくものです。しかし、PR会社は人材の流動化が激しく、経験の浅い人も少なくないのが実情です。なので、人脈を期待するクライアント側とサービスを提供するPR会社側でギャップが生じているように感じます。
PR会社に身を置いたことのある経験から、ITやメディカルといった特定の業界に長くいる人の中には、そうした業界のメディアやフリーライターとの関係ができている人はそれなりにいました。しかしその一方で、影響力のあり新聞やテレビとなると、「この人は人脈がある」と感じた人は残念ながらいません。
■PR会社にマスコミ人脈は期待できない?
「人脈をクライアントから期待されながら、実はそれほど人脈がない」。それがPR会社の実態と言えなくもありません。筆者にも長くお付き合いのあるマスコミの方が複数います。中には全国紙の人もいて、その人脈を活用して記事にしてもらったこともあります。それでも数えるほどの機会しかありませんでした。ましてや日常的に人脈を駆使することが出来る人はほとんどいないのではないかと思います。
全国紙の記者は定期的にローテーションされて担当が替わります。そうすると一から人脈を作り直さなければなりません。事業会社の広報担当者にとっては欠かせない仕事です。PR会社もそうあるべきでしょうが、そうしたことを「きちんとできているPR会社がどれほどあるのかな?」と感じます。少なくとも筆者が身を置いたことのあるPR会社ではそうではなかったので。
「メディア人脈は任してください」と安請け合いするようなPR会社には、逆に慎重になるくらいでちょうどいいと思います。