広報パーソンのつぶやき

事業会社の広報担当者と広報コンサルティングの経験からコミュニケーション全般をメインに、ライフスタイル風なネタも。全国通訳案内士(英語)

謝罪会見ではトップが率先して説明すべき

 

世界でも珍しい「謝罪会見」という光景

 記者クラブによってルールは多少異なりますが、企業からの発表の申し込みは2日前までに発表タイトルと発表日時を幹事社に告げ、その了解を得ることとされています。幹事社とはいわば、持ち回りの世話役で、定期的に開かれる記者クラブの集まりで決められます。

 

 発表が事前に予定されているものはそうした告知ができますが、東京証券取引所が規定するインサイダー取引の対象となるような情報は、その限りではありません。こうした情報は発表当日に告知されます。別名“飛び込み”と言われます。

 

 該当する重要情報は様々ですが、「会社の運営、業務または財産に関する重要な事実であって、投資判断に著しい影響をおよぼすもの」とされています。こうした緊急発表では記者会見が行われることが少なくありません。

 

 その目的は事実関係や会社としての見解を、マスコミを通じて発信することで憶測や誤解を防止することにあります。また、その事態に対する企業姿勢をアピールし、社会に対する説明責任を示すことにもなります。

 

 企業にとってネガティブな情報を伴う会見の場合、謝罪が付き物です。いわば「事態の収束を早める」ための切り札という側面もあります。しかし、トップを出すタイミングを見誤った結果、火に油を注ぐケースが後を絶ちません。最近話題になった東芝の場合もそうです。

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1.ホテルチェーンの場合

 2年ほど前に食品偽装が問題となったホテルチェーンのケースでは、最初に会見を開いたのは同社の2人の部長でした。その2日後に社長が会見を開きましたが、自身の進退については「いまのところ(辞任は)考えていない」と述べましたが、再び開かれた会見で結局辞任することになりました。

 

2.都市銀行の場合

 同じ年に起きた国内有数の都銀による暴力団への融資問題も似たような経緯を辿りました。金融庁からその都銀に業務改善命令が出されたのに広報担当者がリリースを配布しただけでした。朝日新聞や読売新聞が翌日の朝刊1面トップで報じるような大きなニュースにもかかわらずです。

 

 問題発覚の一週間後に会見が開かれましたが出てきたのは副頭取。副頭取は「頭取への報告はされていなかった」と弁明しましたが、その後一転、頭取らトップも融資の事実を把握していたとして8日になってようやく頭取が会見を行いました。

 

 どちらのケースも、結果的に経営トップが記者会見を開かざるを得ない状況に追い込まれてしまいました。おそらく両社の関係者の間では、「トップがわざわざ説明するほどの内容ではない」という認識の甘さが背景にあったと思います。

 

 広報担当者も一介のサラリーマンなので「トップを守ろう」とする意識が働くことは理解できます。しかしその一方で、それが重大であればあるほど、「(トップが)相応の覚悟を持って」説明責任を果たさなければならないと考えます。

 

 特に、マスコミと接点を持つ広報は「会社の常識が世間の非常識」とならないように冷静な第三者の視点が求められます。