広報パーソンのつぶやき

事業会社の広報担当者と広報コンサルティングの経験からコミュニケーション全般をメインに、ライフスタイル風なネタも。全国通訳案内士(英語)

「良い会社に悪い広報なし」なのか?その2

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■「良い会社に悪い広報なし」なのか?②

 以前、企業取材歴の長い、ある新聞社の記者OBが「良い会社に悪い広報なし。悪い会社に良い広報なし」と力説していたことを書きました。「一理あるな」と思う反面、「いくら優秀な広報パーソンでも、その力量だけではいかんともしがたいのが、クライシスが発生した時」とも感じます。

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 つまり、緊急事態においても冷静さを失わずに、ステークホルダー側に立った判断できなければ「良い広報」 とは言えないのではないか、と。いくら平時のきめ細かな広報対応によって 、「良い会社」の評価を受けても、有事の際に、一度でもお粗末な対応をしてしまうと、一気に「悪い会社」に評価を落としてしまう。それを強く感じた広報対応が去年二つありました。

 

 それは、神戸製鋼日産自動車のケースです。神鋼は品質データの改ざんが複数商品で行われていました。また、日産では完成車の検査不正により大規模リコールに追い込まれました。神鋼も日産も日本を代表する企業の一つですし、両社の広報対応に好意的な見方をするマスコミは少なくなかったはずです。

 

神戸製鋼日産自動車の不祥事で感じたこと

 神鋼は10月8日にこの問題で初めて会見を行いました。8日は日曜でしたが、三連休の中日でもありました。このような日にわざわざ会見を行うのは極めて異例なことです。突発的な事故ならいざ知らず、その日にあえて行わなければならない理由は見当たりません。

 

 「前日夜に会見を行おうとしたが、外部弁護士に反対された」との新聞報道もありましたが、「土曜の夜はまずくて、日曜の(しかも三連休中日の)昼過ぎ」ならいいという理屈は通りません。せめて金曜に発表することはできなかったのでしょうか。本来、緊急記者会見は「早期収束の切り札」として活用すべきですが、神鋼の場合、10月だけで7回の記者会見を開くことになってしまい、そのたびに社長や経営幹部のお詫びが繰り返されました。

 

 日産は、無資格者による完成検査の不正に関する釈明会見を9月29日に行いました。国土交通省記者クラブで行った会見に出席したのは広報などを担当する2名の部長でした。今でも写真がネットに掲載されていますが、ノーネクタイ姿でお辞儀をする何ともしまらないものでした。

 

 その4日後に社長が100万台を超える大規模リコールを発表しますが、ここでも「頭を深々と下げることはせず、不祥事企業の「謝罪会見」とは明らかに違っていた」(2017年10月3日 産経新聞)と批判されました。

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■有事の際に真価が問われる広報部門

  「大したことはないと高をくくっていたのか」、それとも「『したことはない』という体(てい)を演出したかったのか」はわかりませんが、どちらにしても、危機意識が会社と社会で大きなギャップがあったために、問題を余計にこじらせてしまったと言わざるを得ません。

 

 神鋼は筆者が20年前に広報担当者をしていた会社でもあります。これまでも何度か大きな不祥事に見舞われたました。実際にそうした不祥事におけるマスコミ対応をしていた時期もあります。今回の不祥事は、それらを上回るダメージに違いありません。信頼回復は簡単ではないでしょうが、今後も見守り続けたいと思います。

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