「情報流通インデックス」で見落とされがちな事実
■プレゼンでよく見かけるマストデータ
「情報流通インデックス」という総務省が調べたものがあります。2011年8月に発表されたデータですが、いまだにいろんなところで見聞します。いわばプレゼンのマストデータです。
情報流通を「人間によって消費されることを目的として、メディアを用いて行われる情報の伝送や情報を記録した媒体の輸送」と定義。流通されている情報量と消費されている情報量が、2001年を起点に9年間の推移がまとめられています。
「消費情報」とは私たちがブログを読んだり、テレビを視聴したりすること。一方、「流通情報」とはインターネットでブログ記事を伝送して表示したり、電波で番組を送ってテレビなどで表示することを意味します。
人間の情報消費能力はそうたやすく変わるものではないですが、それでも調査の起点の消費情報量100に対して、2009年は109と増えました。とはいえ、これ以上右肩上がりになるとは考えにくいでしょう。
■二つの「驚かせポイント」
それに対し、流通情報量は198になっているというのが一つ目の「驚かせポイント」。そして、メディア別の情報量では「インターネット」の伸びが突出しており、2009年は7163!つまり、2001年に比べて約72倍。これが二つ目の「驚かせポイント」です。
これら2つの「驚かせポイント」をもとに、消費能力はそんなに変わっていないのに、情報過多の状態が年々増している。つまり、「情報がいかに伝えにくくなっているか」を示す論拠として活用されています。
■見落とされがちな三つ目の「驚かせポイント」
ここで見落とされがちなのは、2009年の流通情報量の98.5%、消費情報量の73.3%は「放送」であるという事実です。筆者も最近になって、この資料を閲覧するまでは知りませんでした。
「インターネット」はそれぞれ0.8%、11.8%にすぎません。(「印刷・出版」はさらに低く0.4%、8.6%)つまり、流通情報量全体のわずか1%の部分をクローズアップして、インターネットの伸びが大変なことになっている、と勘違いしていることになります。
単なる勘違いなのか、見落としなのか、はたまた我田引水なのかはわかりませんが、このデータを引用するときには、「テレビはやっぱり強かった」ということも言わないとフェアじゃないでしょう。
いうまでもなく、調査時点からライフスタイルなども変化に伴い、情報への向き合い方を変わっています。引き続き、「テレビはやっぱり強かった」といえるのか、今後の調査結果(が出るのか出ないのか不明ですが)に注目したいと思います。