顧客に提供できる価値の創造なくして広報なし
■北千住の人気居酒屋を紹介した日経MJの記事
日経MJの6月24日付の「うまい飲食ビズ」というコラムで、東京下町の北千住にある炉端焼きがウリの人気居酒屋にスポットをあて、その人気の秘密を解説しています。
丸の内や赤坂といったビジネス街からは離れた場所の居酒屋ですが、お酒目当てではなく、「おいしい料理を食べたいという30~40代の近隣に勤める女性客が多い」。その人気の秘密は「食べたい量を頼める」、「高級感を醸し出す」、「定番をひとひねりして驚かす」の三つあると。
「食べたい量を頼める」とは、ばら売りができるという意味。5本780円の「海老マヨ」を1本180円にばら売りし始めた。少量でいろんなものを食べてみたいという人には好都合。1本あたりの単価は上がるのに割安感も演出できます。
「高級感を醸し出す」とは、「鶏の一夜干し」というメニュー名はそのままに、盛り付けやお皿をがらりと変えて、値段も100円上げた。それでも、これが奏功し、人気メニューの一つになったと。
最後の「定番をひとひねりして驚かす」では、居酒屋なら大抵のお店にある「ポテトサラダ」にカニとイクラを加えて差別化。他にもお客さん自らが電動ミキサーで抹茶を立てる「濃厚まっちゃ割り」も人気だそう。
「顧客に提供できる価値を創造し続け、しかもその価値をできるだけ広く伝えること」がマーケティング部門の使命です。そして、マーケティング戦略の四本柱は、①「特化(Specialization)」、②「差別化(Differentiation)」、③「細分化(Segmentation)」、④「集中化(Concentration)」。
■「顧客に提供できる価値の創造なくして広報なし」
北千住の居酒屋を戦略の四本柱に照らすと、炉端焼きへのこだわりは「特化」であり「集中化」。ばら売りするのは「差別化」であり「細分化」。高級感の醸成や定番メニューのひとひねりは「差別化」と分類できます。
日経の関連会社のリサーチャーが本欄を執筆しているようですが、「顧客に提供できる価値を創造し続ける」ことに地道にとりくんだからこそ、この記事につながったのでしょう。
顧客に対する価値創造という原理原則に取り組まずに、広報でそれをカバーしようとしても、それは無理というもの。集客のために、「良質な媒体に記事を出したい」気持ちはお店の関係者なら当然の願いでしょう。でもそう考える前に、今一度自分たちが提供できる競争優位性を自問自答してみてほしい。
「顧客に提供できる価値を創造し続ける」ことができてこそ、真価を発揮するのが広報活動です。