スピーチライティングの6つのコツ
■スピーチの名手の陰には、名スピーチライターがいる
広報の仕事の中心は報道対応ですが、中には、社長のスピーチ原稿を書くという仕事を任されている人もいるでしょう。筆者も事業会社の広報担当者の頃、社長の年頭あいさつの草稿を行ったことがあります。
社長本人の意向などを十分踏まえたうえで、何度も練り直す必要があるため、プレスリリースに比べるとかなり骨の折れる作業になります。早い会社なら、この時期から検討をすでに始めているはずです。
日本では「スピーチライター」を本業にしている人はかなり珍しいと思います。しかし、欧米ではさほど珍しいことではありません。オバマ大統領やケネディ大統領といった稀代のスピーチの名手の陰には、名スピーチライターが必ず存在しています。
■スピーチライティングの6つのコツ
「成功する人の『語る力』」(2013年)はイギリスのトニー・ブレア元首相のスピーチライターを務めた人による本ですが、自らの豊富な経験をベースにした、「スピーチライティングの極意」が書かれています。
一般的なスピーチライティングのコツを6つにまとめており、大いに参考になります。著者はこれをDETAILと呼んでいます。以下の通りです。
Delivery(効果的な話し方)
Expectations(期待される内容)
Topic(中心となる主張)
Audience(聴衆についての情報)
Individual(自分の個性)
Language(使う言葉)
Topicでは、「スピーチの一番核となるテーマを一行で表現してみよう」と提案しています。それができないのなら、「自分のテーマがわかっていない」ことにつながるのだと。言い換えると、実際に書き始める前に「中心となる主張」を端的に表現できなければならないということです。
しかし、実際には壇上で「自分が言うべきことを全く分かっていないケースがあまりにも多い」と戒めています。中心となる主張がクリアになっていないのに、スピーチライティングをするのは無意味であることを教えられました。
「KISSの原則」というものがありますが、本書でも同様のことを主張していることがわかります。ちなみにKISSは、”Keep it simple, stupid”あるいは”Keep it short and simple”の略。「常に簡潔にせよ」という意味です。