企業が危機の際にコントロールできるのは意思決定の部分だけ
■企業が危機の際にコントロールできるのは意思決定の部分だけ
「企業がどんなに気をつけていても、ブランドに危機は訪れるものだ。企業はコントロールできるものは、危機が発生した時にどのように対応するか、その意思決定の部分である」。
先日読んだ「あのブランドの失敗に学べ」にそうあります。本では「広報活動の失敗」として4つの事例を引いており、エクソンの過去最大の原油流出事故について書きました。
二つ目の事例として描かれているのが、「ペリエのベンゼン混入」で、冒頭の文章は、そこから引いたものです。今でもミネラルウォーターとしてたいていのスーパーで販売しているペリエですが、かつて大きな危機にさらされました。
1990年に多量のベンゼンが含まれているペリエが発見されました。米国で行われたミネラルウォーターの定期検査でそれが判明しました。化学物質を製造するために使われるベンゼンですが、発がん性があるなど体内に入ると健康に悪影響が出るものです。
毒性の物質がミネラルウォーターから検出されてわけですから、一大事です。商品を回収する旨が発表され、全世界で1.6億本が回収されました。しかし問題はここから。はっきりとした理由を告げないままのいきなりの回収だったので、「何で??」と消費者が思うのは当然で、マスコミもそれを会社側にぶつけました。
ベンゼン混入がわかってからも、一貫した態度を取らず、国によって対処法も違ったといいます。フランス本社の指揮や調整も機能せず、バラバラの対応の上に、混乱したメッセージが重なり、矛盾するコメントが発表されました。
■グローバルブランドに必要なこと
ペリエのような全世界で売られているブランドの場合、たとえ米国で起こった問題であっても、おひざ元の欧州や日本のような他国にもその影響が及びます。本書では、この問題の教訓として四つ挙げています。
それは、「真実を隠すな」、「消費者の信頼を裏切るな」、そして「グローバルブランドには、一貫したコミュニケーションの方針が必要だと認識せよ」、「危機自体にも、その程度に差があることを認識せよ」です。
四つ目の教訓がわかりにくいですが、「自然のままに」がコンセプトの同社にとって、今回は最悪の事態と。こうして消費者のペリエ離れが加速しました。今でもペリエを楽しむことが出来ますが、1992年にネスレに買収され、ブランドだけが残っています。
数年前にペリエ150周年を記念してアンディ・ウォーホルのデザインラベルが売られており、バブルの頃以来久しぶりに口にしてみました。好きな人には申し訳ありませんが、ウォーホルのプレミア感につい、飲んでみましたが、ミネラルウォーターに特段のこだわりもない筆者にとっては、特段の感想もない口当たりでした。(苦笑)